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図書館学徒未満

図書館学に関する本を読んだり調べごとをしたりしています。はてなダイアリーから移行しました。

ネットで何でも分かる訳ではない一つの理由

※2015年11月11日に開催された図書館総合展フォーラム『機関リポジトリの近未来』ネタです。遅くなって申し訳ありません……。

 

 

インターネットが一般に普及してもう16年が経過した。全ての情報はオンラインに移行し、新しい情報がどんどんアップされ、大抵のことはググったら分かるようになった。このまま人類の知は黄金時代を迎え、IP reachなひとは誰でも必要な時に最先端の正確な情報をフリーに得られるようになる……かと思われた。

でも現実はそうじゃない。Twitterでは相変わらずエセ科学デマが広がり、ググっても真偽の不明な謎のまとめサイトが引っかかるばかりだ。科学技術をめぐるメディアの報道は要領を得ないものも多く、情報の出所を知りたくてもどこにあるのか分からない。今までもそうだったし、これからも、このままではネットに最先端の信頼できる情報は出てこない。それはなぜか?

答えは簡単である。そうした情報はオンラインで公開されていないからだ。

 

ある程度マトモで信頼できる最先端の科学や医学に関する情報といえば、大学等の研究機関に属する専門の研究者によって執筆される学術論文だ。それも、同じ研究者による査読を受けたものであればより信頼性が高い。

現在、レビューを受けた学術論文のほとんどは学術雑誌に掲載される。これらの学術雑誌は電子化されている物、また電子媒体でのみ配信される物も多く、大抵の自然科学系学術雑誌ならばオンラインで閲覧が可能だ――安くない料金を支払えば。

例えば最大手の学術出版社の一つであるSpringer社が発刊している"São Paulo Journal of Mathematical Sciences"誌はその内容をSpringer社の公式サイトで閲覧できる。論文一本を読むのに39.95ドルだ。Elzevier社の"Academic Radiology"誌の場合、論文のPDFが一本35.95ドルで買える。学術論文を一本書くのに他の10本の論文を引用するとして、実に400ドル近い金額がかかる。

大学のような研究機関において、このような金額を各研究室の予算でちまちま支払うのは現実的ではない。だから多くの大学では大学図書館を通じ、複数の電子ジャーナルを一括契約してなるべく購読費を抑えようとしている。それでも電子ジャーナルの年間購読料は数億にも上り、大学図書館の財政を圧迫している。

そこで各大学では、少なくとも自機関で執筆された論文については自前でオンライン上に公開しあい、広く一般の利用に供するとともに電子ジャーナルの購読料を抑える道を模索している。この自前アーカイブを機関リポジトリといい、査読付き論文の他にも学位論文や紀要論文、研究データなど幅広くその機関の研究成果を収録している。また、この機関リポジトリで執筆者自身が論文を公開することをグリーン・オープンアクセスという。

 

この機関リポジトリは素晴らしいアイデアだが、現実には問題もある。まず、機関リポジトリの構築・運営自体がタダではない。機関リポジトリは単なるファイルサーバではなく、各種メタデータの格納や研究機関での実用に耐える検索性能、他の論文アーカイブとの連携も求められる。わが国ではNII(国立情報学研究所)が率先して機関リポジトリの普及に励んでいるが、この問題を解決すべくJAIRO Cloudというクラウド型サービスまで提供して頑張っている。

www.nii.ac.jp

これにより今までに672の機関リポジトリが誕生しているが、日本国内の大学設置数が781校であることを考えるとかなりの健闘ぶりだ。いつか100%になる日を楽しみに待ちたい。

しかしながら次の大きな壁が、そもそも機関リポジトリでの公開がしづらい論文がかなりの数存在するというものだ。

実は学術雑誌に掲載された論文の著作権は、出版社がこれを持つという契約になっている。著者の一存で公開する訳にはいかないのだ。厳密に言えば「著者最終稿」という著者が投稿する直前の論文原稿は著者に権利があるが、それは雑誌に掲載されるそのままの形のものではない。また複数の所属機関が異なる著者たちによって執筆された場合や、外部からの資金を受けて行った研究成果に関する権利など、学術論文の著作権処理は案外複雑なのだ。

加えて、体裁の異なる論文や研究データを適切に処理し機関リポジトリで一元管理するための細かい作業があり、これが案外バカにならない手間だ。現在、論文が電子化される際にはその論文単位での管理のみならず、論文に含まれる図表に個別にDOI(デジタルオブジェクト識別子)を付与しての管理が一般的になりつつある。機関リポジトリに論文を登録するにあたっても、単にPDFをアップロードすればいいというものではない。研究者がこの手間を敬遠するのも、機関リポジトリへの登録を阻む壁になっている。現在機関リポジトリにおける論文の全文公開率は、博士論文に限っても28%程だ。

現在、国はこうした問題をなんとかするために、科研費の一環で研究成果公開促進費という助成金をつけている。オープンアクセス可能な論文の数は学術研究の国際競争力にとても関係が深いから、国も機関リポジトリ等を活用したオープンアクセス化の推進を行っている。先日報道もあったが、第5期科学技術基本計画では公的資金を用いた研究成果をデータも含め原則公開の義務付けが決定されている。

www.asahi.com

完成した論文本体だけではなく実験データも併せて公表されれば、例えばSTAP細胞の時のような問題をある程度早い段階で検証できる。また、似たような実験を他の研究でやっている場合、そのデータを参照して二度手間を防ぐこともできる。そのため、最近では論文そのもののオープンアクセス化にとどまらない研究データのオープン化への動きが活発だ。

 

研究者は今のところ査読付きの学術雑誌に論文を掲載するか、あるいは著書を出版しないと業績にならない。Twitterで流布されるデマの訂正に研究者の力を期待する声もあるが、そんなことをしていても彼らには一円にもならないのだ。専門知識を他者に提供して生業としているひとに対し、タダでデマを訂正して回れというのは筋違いだ。

もし研究者に対しネット上での啓蒙活動を求めるならば、グリーンの論文を増やし、それらにオンラインで簡単にアクセスできる道を拓いてもらうしかない。ここ最近ではあるが、オルトメトリクスと言って学術論文同士の被引用数以外の観点から学術論文の影響力を評価しようというアイデアも生まれている。そのアイデアを採用するならば、オンラインでの論文の閲覧回数やTwitterでの論文への言及数などが論文の評価を上げることにもなるのだ。そうなれば、研究者への評価にもつながり得る。

エセ科学に対抗する学術論文を一般人が「読んで応援」できるなら、研究者の側にもそうした論文を執筆するインセンティブが生まれる。お互いに悪い話ではないはずだ。もし同意してくれるなら、まずは自分の通っている学校や卒業した学校などの機関リポジトリ状況を調べ、OBとして、そして一利用者として関心を持って頂けると幸いです。

 

すべてはグリーンのために。

 

 

学術書を書く

学術書を書く

 

 

※参考資料リスト

脚注がうまく表示されないからこちらに。

一年間の新刊貸出猶予にあたって、図書館から出版社にお願いがあります

今月開催された図書館総合展において、新潮社の社長が図書館に対し一年間の貸出猶予を求めるとした報道が出ています。

news.tbs.co.jp

一応この場にいた人間としまして、本発言のニュアンスをできる限り正しくお伝えしますと

  • あくまで「特定のタイトル」の貸し出しに対し「一定の配慮」を求める「お願い」であり、強制力はない。従わない図書館がいても構わない
  • 所蔵副本冊数や具体的な貸出数等についての具体的制限は設けない。あくまで図書館側の自主的な配慮に任せる
  • 本件を強く要望しているのは著者たちであり、出版社としてはそうした声を抑えきれない
  • 出版社としては、図書館での貸出と新刊本の売上に明確な因果関係が現時点であると言い難いことは把握している。
  • こういうことは本のジャンルによる差が大きく、文芸書以外の分野では図書館が買い支えている側面があることも理解している。図書館との関係を悪化させるつもりはない

……といった非常に抑えたトーンの話であり、報道は煽ってるなーというのが率直な感想です。

 

ただ確かに図書館貸出冊数の増加と新刊書売上点数に負の相関がある*1のも事実であり、因果関係は現状あるともないとも言い切れません。本件について著者側の疑念に決着をつけるには、こうした措置を行って"実験"をしてみる以外の方法はないように思います。本件が実際に発動した場合、出版社におかれましてはぜひそうした統計を取ってもらいたいです。

また図書館の中のひと的にも特に反発はないものと思います。「まー残念だけれど権利者さんが言うならそうしようか?」くらいに捉えている方が多いような感触です。多分本件に強い反発を覚えているのは一般の図書館ヘビーユーザーの方なのではないでしょうか。

 

しかし図書館員に感情的な反発がないとはいえ、一部の本を特別扱いしなければならない訳ですから、事務作業の手間が増えます。できるだけミスなく新刊本を受け入れて出版社や著者のご要望に沿うために、出版社その他書籍流通関係者におかれましては単なる要望だけではなく下記のような配慮をお願いできませんでしょうか*2

  1. 該当書籍を見計らい本から外す
    図書館に購入されると分かり切っている見計らい本に、貸出猶予対象の本が入っているとチェックに手間が取られます。そのような本を図書館に持ってこないようにお願いしたいです。
  2. 新刊案内ならびにMARCに注意書きを記載
  3. 月ごとに「貸出可能になった本一覧」を配信
    出版社数社合同で、TRC発注バーコードつきの貸出可能本タイトル一覧をお送りいただけると、タイミングよく購入できて便利です。その時点での在庫の有無もあればなおいいですね。
  4. 該当書籍の奥付に貸出猶予期間を記載
  5. 各出版社は「現在の貸出猶予タイトル一覧」を公開
    図書館利用者にご説明しなくてはなりませんので、各出版社のWEBサイトに「現在の貸出停止申請タイトル一覧」を掲載しておいて頂きたいです。図書館のオンラインOPACからそのページにリンクをしますし、また印刷して各図書館の館内にも掲示します。
  6. 貸出猶予に関するお問い合わせ窓口の開設
    図書館員が窓口などで新刊貸出猶予について個別に利用者にご説明するのは大変な手間です。貸出猶予タイトル一覧と共に各出版社のお問い合わせ電話番号を館内に掲示しておきますので、そうした窓口の開設をお願い致します。別に専用窓口でなくても構いません。

……うーん他に何かあるかな……まだアイデアのある方はコメント等いただけますと幸いです。

 この思い、とどけ出版社に!

 

つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)

つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)

 

 

※いくつかいただいたコメントに関して追記(20151115)

「本の人気に関わらず同じ冊数を所蔵すればいいのでは?」

 これはちょっと難しい話なのですが、何度も貸し出される人気のある本は損傷が激しく、100回も貸し出されると再購入を検討しなければならないくらいボロボロになります。図書館には本をそれなりの期間保管するという役目もあるので、1年くらいでボロボロになり廃棄しなければならないと分かり切っている本の副本を持たない、というのは厳しいのではないかと思います。基本的に図書館はそういった資料の損失も考慮して副本を購入しており、単純な貸出数増加のためばかりに副本を購入している訳ではありません。電子書籍の貸し出しが一般的になれば、また事情は変わってくるのかもしれません。

「貸出猶予をお願いされてるだけなのだから、禁帯出にしたらよいのでは?」

貸出猶予対象の本の具体的な所蔵について新潮社の方から特に言及はなかったのですが、貸出猶予期間中の各館の対応としては下記の4つが考えられると思います。

  1. 該当書籍を購入・所蔵しない
  2. 該当書籍を購入するが利用には供さない(書庫にしまう、展示のみ行うなど)
  3. 該当書籍を購入し館内利用にも供するが貸出はしない
  4. 該当書籍を購入し、普通に貸し出す(「お願い」を聞かない)

本稿では1の路線で話をしましたが、この「お願い」をどのように解釈するかは各館で異なることと思います。また現段階では新潮社の方も1~3のうちどの路線を採用してもらいたいかについて明確な考えがないように見えました。

 個人的には実験的な意味合いから、図書館が一切該当書籍の売上に影響を与えない状態での数字を見たいので、1の方針を採用しました。ただ本件が実際に発動した場合、各感がどの方針を選ぶかには興味がありますので、それはそれで何らかの調査を期待しています。

*1:図書館総合展フォーラム内では図書館の館数と本の売上の相関も指摘されていました。確かに図書館の分館数が多ければ多いほど本が借りやすくなるので、もしそこに何らかの因果関係があるのであれば、単位人数当たりの分館が多い地域と少ない地域で書店の売上数に差があるでしょう。追って調べてみたいテーマです。

*2:元ネタは@syoujinkankyo様との雑談ですw

図書館は格差の固定や再生産に加担しているかもしれない問題

図書館

 

図書館を文化資本の格差是正装置として期待する声は多い。しかし本当に、図書館は文化格差・知的格差の拡大防止や解消に貢献しているのだろうか?

この問題について、本稿ではまずid: yuki_o 氏らの興味深い調査『社会階層と図書館利用』を紹介する。

これは国会図書館が平成26年度に行った『図書館利用者の情報行動の傾向及び図書館に関する意識調査』という調査結果の分析だ。yuki_o 氏らはこのデータから回答者を「文化資本」「経済資本」「社会関係資本」の3つの軸で分類し、それぞれの図書館利用実態を検証した。

もし図書館が文化格差の拡大防止に貢献しているのであれば、文化資本を持たない層がより積極的に図書館を活用しているはずだ――えっ、そんなはずある訳ないって?

そう、そんなはずなかったのだ。

f:id:aliliput:20151023150049j:plain

「高学歴者ほど図書館を利用している割合が高い」

「高学歴者ほど図書館を利用している割合が高い」

大事なことなので二度言いました。

 

このことは経済資本とのクロス分析で見るとなお顕著だ。経済資本条件を統制してなお、高学歴者の図書館利用率は高い。

f:id:aliliput:20151023160042j:plain

余りにも簡単に予想でき、あまりにも身も蓋もない事実だ。今現在文化資本を持たないひとは、自ら図書館を利用しようなどと思わないのである。そして図書館は学校と違い、利用しようと思わないひとに強制的に利用させることはできない。

 

図書館が主に高学歴者によって利用されているのであれば、図書館は格差の解消どころかむしろ拡大・再生産に加担しているかもしれないのでは? ((元リンクをたどっていただければ分かりますが、本研究の原著者たちは相関を指摘するにとどめ因果を見出してはいません。

 もし本稿にて因果関係について踏み込んだ解釈が読み取れるとしたら、文責はすべてaliliputにあります。ぜひ元データをご参照頂いた上で、ご意見ご指摘を賜れればと思います。))

そもそも、図書館に格差の解消という役目が原理的に可能なんだろうか?

 

この研究が敷いているであろうブルデューは、文化資本の再生産メカニズムの存在を指摘し、文化資本は世代間で継承されるものだと主張している。

また、安藤寿康氏などの遺伝論者は、そもそも知能は遺伝によって親から子に受け継がれるものだと主張している。

遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である (ちくま新書)

遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である (ちくま新書)

 

 

 

 

別の側面からこの事態を検証してみよう。

財団法人 出版文化産業振興財団『現代人の読書実態調査』2009

によれば、親が読書好きであったほど子どもも読書好きの傾向にあると報告されている。

f:id:aliliput:20151023160314j:plain

読書好きの傾向というのは「遺伝」するのだろうか?つまり、文化資本が高い親から生まれ育てられない限り、子どもも高い文化資本を持つことはできないのだろうか?

もしそうなのであれば、図書館による格差の解消もへったくれもない。生まれが全てを握っている。図書館は無罪だし、無力だ。

 

この問題に対する見解はどうやら専門家の間でも割れるようだ。知能がどこまで器質的に遺伝するのかという問題は、教育学者から大脳生理学者、生物学者など多くの研究者の論争の的になってきた。

頭のでき―決めるのは遺伝か、環境か

頭のでき―決めるのは遺伝か、環境か

 

 多分図書館学徒や教育学徒の多くは、知能が遺伝するという説に与しないだろう。そうじゃない事例を多く目の当たりにしてきているからだ。ただし世の中にはそう思わないひとも多くいる。ニスベット『頭のでき』は、知能と遺伝の関連について調査した研究をメタアナライズし、それらの論点に詳細な解説を加えている。

さて、知能は「遺伝」しないまでも「継承」することは確かなようだ。生まれつき札束を持って生まれてくる子どもはいないが、それでも親の経済力が相続によって子に継承されるように、知能もまた継承される。そのメカニズムの一端を、『現代人の読書実態調査』は以下のように示している。

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読書量は親からの読み聞かせと明らかな相関がある。読書習慣は器質的な遺伝ではなく、親からの読み聞かせという行為を通じて親から子に継承されるのだ。このことは次の学校における読書教育が如実に示している。

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学校における読書教育も、親による読み聞かせと同じくらいの効果を上げることが分かる。学校は子どもを産まず育てるだけだから、これは遺伝ではなく環境による成果だ。

 

同様の指摘は、文部科学省お茶の水女子大学に委託して行った全国学力・学習状況の調査研究でもなされている。

「平成25年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」(国立大学法人お茶の水女子大学)2014

こちらでも、家庭の社会・経済資本に関わらず読み聞かせ等を通した読書体験を増加させるような試みによって子どもの学力の向上は可能だと指摘されている。 *1

 

しかし図書館は学校ではない。文化資本を持たず、したがって図書館を利用しようという発想のないひとたちに無理やり来館させることはできない。図書館はあくまで、自分で利用したいと考えるひとに対してサービスを提供する場所だ。

ということは、やはり図書館には格差を解消する能力はないのだろうか?

 

そもそも図書館の役割を考えると「文化資本の格差を解消する」ことが図書館のミッションになるのだろうか。格差解消はあくまで社会というマスに対する介入であり、個別の対象への支援を直接の業務とする図書館とは性質が異なるものだ。だから、図書館が直接に格差解消を業務とはできないし、する必要もない。

ただし、格差解消を目的とした別の機関を支援することはできる。

例えばブルデューとニスベットも指摘した通り、学校は階級の再生産システムにもなれば格差解消に大きな力を持つ機関でもある。もし学校が自校の担当地域内の格差解消を目指した場合、図書館にはその活動を支援することで格差解消に貢献する道が拓かれる。

 

図書館とは一体何をする機関なのか、そのことに未だにいまいちコンセンサスが取れていないという点が、図書館行政をめぐる混乱や図書館の立ち位置の悪化につながっているように思える。この辺りの理論的検討は一体今どこまで進んでいるんだろうか?素人質問で恐縮ですが、なにとぞご教示頂けますと幸いです。

 

 

 

*1:本研究については

synodos.jp

こちらの記事もご参照ください。

学問はどうやって一般人の理解を得るべきか -カミオカンデ行ってきました!-

図書館とはあんまり関係ないですがサイエンスコミュニケーションネタなのでこちらへ。

 

梶田先生、ノーベル物理学賞受賞おめでとうございます!

という訳で、去る7/19にスーパーカミオカンデ行ってきた話をします。別に書くのをサボっていた訳ではなくてこのタイミングを狙っていたんだよ、本当だよ!

 

スーパーカミオカンデカミオカンデ岐阜県飛騨市神岡町にある巨大なニュートリノ観測施設で、旧神岡鉱山の坑道を利用して建設されています。先にノーベル賞を受賞された小柴先生が設計指導をされていました。

毎年7月にGSA

gsa-hida.jp

というイベントで一般向けの見学会が開催されており、この時はスーパーカミオカンデの真上1mくらいまで近寄ることができます。激戦の中チケットをとってくれたお友だちに感謝です!

 

さてスーパーカミオカンデ、運営費だけでも年6、7億円を使用しており、物理的規模も含めて我が国のビッグサイエンスの象徴みたいなところです。世界各国から多数の研究者や関連業者が頻繁に出入りもしています。それが神岡町という人口1万人程度の地域でどのように受容されているのかな?という点がずっと気になっておりました。

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これが神岡町の観光パンフレット。かなりデザイン性の高い作りです。神岡町では宿泊施設や店舗等のいたるところで配布されています。

ここには特にカミオカンデの話は強調されておらず、鉱山を中心とした神岡町の歴史が紹介されています。

神岡町内にはこのような鉱山のサンプルが飾られた道標があちこちにあり、

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鉱山の街情緒を漂わせています。この道標、どれも綺麗で驚きました。神岡町の観光案内系のサインや公園はきれいに整備されており、結構予算がついているのかな?と思いました。

さて、カミオカンデ見学は朝早くから始まります。見学会はまず神岡町公民館に集合してそこで注意事項の説明とヘルメットの配布を受けた後、バスでカミオカンデまで行きます。

集合場所になっている公民館前ではカミオカンデ&ニュートリノ関連グッズが販売されていました。

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こちらのグッズの販売やカミオカンデまでの案内等、見学会の進行の一切を行っているGSA運営スタッフは地元のボランティアが中心とのことです。グッズの、特に食べ物系は売れ行きが激しいので早めの確保が必要です。これらのグッズは神岡町内の企業が製造しています。

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さてバスに乗って坑道内へ。

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神岡鉱業株式会社が鉱山内見学に協力しており、まず神岡鉱業の歴史や事業の説明がしっかりありました。写真は昔の鉱山採掘の様子を再現したお芝居です。坑道内の気温は15度を切るのによくやってくれました……!グッズといい案内や説明の演出といい、地元の方々の神岡鉱山カミオカンデ愛が伝わってきます。

カミオカンデの運営には地元企業や地元住民の方のご協力が不可欠でしょうが、普段どのようにコミュニケーションをとっているのか気になります。サイエンスカフェはたまに開催されているようですが。

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こちらはつい最近まで実際に採掘に使われていた現役の重機。動かせるし乗せてもくれます。これらの重機はカミオカンデ建設の様子を録画した映像に出てきていますので、おそらくカミオカンデの建設に使用されていますが、その話は特にされませんでした。でも岩山を掘るには専用重機と技術が必要なので、建設や設備メンテナンスには神岡工業株式会社の協力が不可欠なはずです。

 

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さてついにカミオカンデの内部へ……なのですが、有名なあの、タンクの中に光電子増倍管がずらっと並んでいるところは見られません。ニュートリノ観測中のためタンクを開けることはできないからです。その代り、タンクの蓋の上を歩きそこでカミオカンデの説明を受けます。広い!

写真の枚数が多いのでカミオカンデ内部の写真はGoogle フォト アルバムでお楽しみください。カミオカンデのデータ処理の話などがあり、ITクラスタにも興味深いパネルが飾られていました。

なお、スーパーカミオカンデと現カムランドで行われている研究についてそれぞれ東京大学東北大学の方からご説明をいただいたのですが、お金の話は一切出てきませんでした。特に社会的意義を訴える話もなし。頂いたパンフレットも同様です。純粋にアカデミックな話題に終始していました。それはそれで夢があって大変に素晴らしいことだなと思うのですが、個人的にはこの辺を聞ければ聞いてみたかったです。

日本だけではなく世界中の研究者や研究機関が関わり相応の予算を使うビッグプロジェクトなので、きっと内部的には非常に色々あるのだと思います。でもその辺りを外面に一切出さず、まとまりの良いPR資料を用意している点には感銘を受けました。その辺りの政治的技術を知りたいです。某もっと規模が小さいのに内ゲバばっかりしている業界の参考になるかもしれません(?

カミオカンデ見学自体の話は以上です。続いて赤ふんラーメンと暗黒物質まんじゅうの画像をお楽しみください。

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f:id:aliliput:20150720071546j:plain

 

ちなみに神岡町自体ものんびりしていて自然が豊富で、ちょっとゆっくりしたいようなところでした。観光案内もしてくれたのだけれど、路線バスが2時間に一本とかいうレベルなので長滞在ができませんでした。ここをもう少し対策してくれるとありがたいな……

一人で組織を回すには - 「ワンパーソン・ライブラリーを運営する能力と性格に関するチェックリスト」を訳したよ!

カレントアウェアネスで紹介されていた「ワンパーソン・ライブラリーを運営する能力と性格に関するチェックリスト(記事紹介) | カレントアウェアネス・ポータル」を訳してみました。原文はこちらです。すっごく遅いネタで申し訳ありません……。

図書館員向けではありますが、実際に1人である程度の組織を回しているような立場のひとなら結構頷かされるものがあるかもしれません。

 

時間管理

  • やるべきことを書き出し、予定を立てている。
  • 大きなタスクを小さなタスクに分解し、より実行可能なタスクにして優先順位づけをしている。
  • 利用者を最優先し、予定を再編成できるくらいに柔軟である。


変化の管理

  • 自分の組織の中や同僚たちの間で何が起こっているかを知るために時間を取っている。
  • 変化を受け入れている(あるいは最低でも変化を受け入れられるような方法を探している)。
  • 変更事項を伝え、実行に移すよう支援している。最終的に、自分が情報の発信源となっている。


ストレス管理

  • 1日の中で休憩をとり、ワークライフバランスの重要性を理解している。
  • 新しい視点に立って自分の予定や仕事、そして環境を大なり小なり変化させている。
  • 専門家としての役割遂行や能力の向上に時間を取っている。


マーケティング

  • マーケティングは利用者のコミュニティに利益をもたらす重要な活動だと信じている。
  • 利用者に対して図書館サービスや資料を提示する機会を探している。
  • ソーシャルメディアやブログのような、利用者とコミュニケーションする新しい手段を探すのが好きだ。


専門性の向上

  • 昨年、オンラインセミナーやポッドキャストに参加した。
  • 図書館情報学会でちゃんと活動している会員だ。
  • 図書館情報システムやサービスについて疑問があった場合に相談できる同業者のコミュニティに所属している。


資料の拡充

  • 必要な資料を特定するために利用者や管理者と相談している。
  • 資料選定基準を定義する図書館の方針を書いている。
  • 定期的に資料を評価し、データに基づいた予算の決定を行っている。


情報技術

  • いつも腕まくりしてトナーを補充したり、スキャンや印刷の仕方をユーザーに説明している。
  • スマートフォンタブレットを持っており、様々なOSやUIの問題解決ができる。
  • 自組織の情報系スタッフにインターネットセキュリティについて相談しており、ソフトウェアは最新の物を使っている。

目録や刊行物の管理

  • カタロギングは重要な作業であり、資料を利用可能にするためにはきちんと登録されている必要があるべきだと信じている。
  • カタロギングについて疑問があるとき、どこを調べればいいか知っている
  • 雑誌や書籍資料の選書にあたり、予算やスペース、利用者の要望や利用状況を考慮している

スコア

当てはまる項目1つにつき1点加算して、合計点がスコアになります。

20-24点 あなたは一人図書館の運営にとても向いています!多彩なスキルとひとに手を差し伸べようという意志があれば、業務とそれに関連する個性の調和を取るのに何の問題もないでしょう。
16-19点 当てはまらなかった項目を見直してみましょう。それらを改善する時間を取ってみてはいかがですか?他の一人図書館員と話してみて、これが自分の進む道なのかどうかを考えてみましょう。
0-15点 一見すると、あなたは一人図書館の運営にとても向いているとは言えないようです。心配しないで - 図書館情報学分野には他の立場と技能で図書館利用者に奉仕できる多様な進路があります。。

 

如何でしたでしょうか?最後であっさり突き放しているのがちょっと気になりますが、向いている仕事を選ぶのが一番ですよね☆

(※図書館話です)主人がパスファインダーブログを開設して一か月が経ちました……

タイトルは釣(ry

 

事の発端は畏友 id:Koshian 氏とのこんな会話でした。

 

f:id:aliliput:20150311092103p:plain

ではやってみようということでできたのが『書架とラフレンツェ』というブログ内にある以下の記事です。


やる気とモチベーションは関係ない - 書架とラフレンツェ


それでも「好きなことで、生きていく」。慈悲はない。 - 書架とラフレンツェ


嘘つきヤリ捨て男にムカついたときのおススメ小説&映画 - 書架とラフレンツェ


採用で失敗しない、たった一つの冴えたやり方 - 書架とラフレンツェ


なぜ、お金持に増税してはいけないの? - 書架とラフレンツェ


日本人の宗教観はどこまで外国人と違うのか - 書架とラフレンツェ


そろそろ「プログラマー35歳定年説」を徹底論破しとくか - 書架とラフレンツェ

お陰様ですべてホッテントリ入りしました、ありがとうございますありがとうございます。


それが何だっていうの? - パスファインダーがコンテンツ力を持つということ

パスファインダーの実例は例えばこういうところから確認できます。さすが図書館の外のひとにほとんど存在を知られていないだけあって、失礼ながら目が滑るレベルのつまらなさです。ただ、よく見ると《ケース3:離婚したら年金はどうなるの?》など、掘り下げればもっと面白くなりそうなテーマも散見されます。

もったいない、実にもったいない。

 

パスファインダーは利用者を面白がらせるものではない、という話はその通りです。パスファインダーは問題解決のツールであり、エンタテイメントではありません。そのことは大前提として、今回はそれでも「その問題に関心がある」「その問題を解決したいと思っている」ひとに"刺さる"ために、あえてコンテンツ力を高めて多くのひとに見てもらうよう作成しました。どんな素晴らしい問題解決ツールも、それを必要としているひとに届かなければ意味はない、と思うからです。

特定のカテゴリに属する消費者に確実に選好されることを、マーケティング業界のジャーゴンで「刺さる」と言います。パスファインダーにとって"刺さる"ことは、それが問題解決のツールだからこそ必要な特性なのではないかとも考えています。

 

そして、そもそも問題解決はコンテンツとして面白いものです。それは"刺さる"情報だからです。クリステンセン先生の言葉を引くまでもなく、情報を求めるひとは常に問題を抱えており、それを解決したいと考えています。ヒマつぶしのためにダラダラTwitterを眺めているひとですら「ヒマを何とかしたい」という問題を抱えているものです。
だから、図書館が持つパスファインダやブックガイドをそれなりに面白いコンテンツに仕立て上げるのは、単なる話題作り以上に意義のある試みだと思っています。

 

一体どうやったの? - コンテンツ力のあるパスファインダーの作り方

失礼ながら一般的なパスファインダがコンテンツとしてつまらないのは、それがカバーする範囲が広すぎて意味がある情報に見えないからです。意味のある情報はパーソナルに見えるものです。万人受けするようには見えません。

何故かというと「問題」はパーソナルなものだからです。そもそも「その問題を抱えているひと」という括りを適用した時点で対象者が限定されるのはもちろんなのですが、問題を抱えているひとはみんな「自分だけがこの問題で悩んでいる」と思っているという心理的特性があります。ですから閲覧者は万人に当てはまるように見える情報を避ける傾向があります。それはある意味合理的な情報探索行動です。同じ問題でも解決策は色々あり、ひとによってどれが最適かは異なるからです。

だから、一見ニッチで「こんな細かい話気にする奴いるの?」と思えるほどに絞り込み具体性を高めたトピックの方が、結果的に多くのひとに刺さることになります。

 

記事の作成に当たっては出来る限りタイトルを「そのトピックに興味を持つひとにとって」キャッチ―なものにするようにしました。キャッチーな釣りタイトルそれ自体はいわゆる「リンクベイト」と呼ばれるややブラックハットなSEO技術ではありますが、いまどき単なるリンクベイトでは衆目を集められません。"釣る"相手として、記事中で取り扱っている問題に興味を持つひとを想定し、あくまでそのひとたちにウケやすいタイトルをつけました。また記事中の言葉遣いも、想定する対象読者に合ったものにしています。内容さえしっかりしていれば、釣りタイトルでもちゃんと読んでもらえるし拡散されるということも実証できました。

一般的なパスファインダーの作り方はこちらなどに紹介されています。加えて、やはりおそらく一般的なパスファインダー作成者の皆様が留意されているだろう以下の点には注意しました。

  • 特定の結論を押し付けないようにする。地の文で述べる"自説"は一般論にとどめる。 *1
  • 紹介する資料は原則として学術的に公正なものを選ぶ
  • トピックに対して可能な限り網羅的な情報が提供できるように資料を選ぶ

加えて、オンラインで不特定多数に役立ててもらうに当たって以下の点にも気をつけました。

  • その資料を選んだ理由を書く。記事内でトピックに含まれる論点を解体して再構築し、資料の案内においてストーリーを作る
  • 可能な限り入手しやすい資料を選ぶ(絶版・再版未定本を除外する)
  • 学部2年生程度の知識で読み通せる難易度までの資料を選ぶ

資料は1記事につき上記基準に合致するもの20-30冊程度を選び、そこから取捨選択しました。

わたしの専門は教育学と経営学領域なのでその辺りは自力での資料選択を行いましたが、その他分野にかかる一部の記事内容については各分野のエキスパートレビューを受けています。ご協力いただきました皆様にはこの場で再度お礼を申し上げます。ありがとうございました。もちろん、文中の誤りやその他至らぬ点の責任は一切わたしにございますことは言うまでもありません。

 

なお、個人的にはパスファインダーはレファレンス依頼におけるFAQのように捉えておりまして、つまり「ある程度繰り返される(ことが想定される)質問や相談に対する回答をあらかじめ文書にしたもの」であればなんでもアリだと思っております。パスファインダー極左です(キリッ)。

ただパスファインダーというからには、調査方法について踏み込んだ言及ももっと必要だったと思っており、そこは今後同様の記事を書くならば取り組んでみたい改善点です。

 

それでどうなったの? -アクセスログアフィリエイト収益から見るコンテンツ力

冒頭に上げた7記事で総アクセス数は約13万、読者登録数は100人を超え、アフィリエイト(Amazon アソシエイト)収益は約23,000円でした。
また、売り上げた本のうち約半分はKindle版でした。基本的にKindle版が存在する場合、Kindle版の方から優先的に購入されていきました。

流入元ははてなブックマークが最も多く、次にGunosyTwitter、SmartNewsの順でした。しかしながら記事によっては様相が違うものもあり、GIGAZINEやLifehacker、まなめはうすなどからのまとめの流入が多い記事もありました。オーガニック検索からの流入は全体の10%程度ですが、これはブログ開設からあまり期間がなかったことなども考え合わせるとそんなものだろうと思います。

以下、記事ごとに詳細を解説いたします。


やる気とモチベーションは関係ない

主に企業内での職業訓練時のモチベーションコントロールについて関連書籍を紹介しています。教育活動全般に広く応用できる内容を目指しました。
時節柄このテーマについて関心の高い方が多かったようで、第二位のアクセス数を集めています。Gunosy砲の影響も全アクセス数の1/3ほどありました。*2


それでも「好きなことで、生きていく」。慈悲はない。

職業・キャリア形成について悩んでいるひとに対して、少し大局的な視座を提供する資料を選びました。あまり質問に答えているものではなく、どちらかというとブックガイドです。紹介している資料は一見ハウツー本に見えるものの、実は視野を広げ閉塞感を緩めるのに効果的なものを選んでいます。


嘘つきヤリ捨て男にムカついたときのおススメ小説&映画

これもパスファインダーではなくブックガイドですね。タイトルの通りです。これだけは計画的に書いたものではなく、当時インターネッツ上で話題になっていたトピックの便乗記事的なものです。


採用で失敗しない、たった一つの冴えたやり方

「採用」というテーマをメインにしているものの、中身は企業内での実践的な能力評価の話です。能力評価に特化したのですが、これに対して「採用後の教育は考えなくてもいいということ?」というお問い合わせが散見されたので続編として「そろそろ「プログラマー35歳定年説」を徹底論破しとくか」を書きました。


なぜ、お金持に増税してはいけないの?

特に文中では触れなかったのですが、狙い通り「ピケティのことかーッ!!」な閲覧者がたくさん来訪されました。記事内容はピケティ本を読む上でもピケティ関係なくても役に立つような富裕層に対する社会学的な実態調査、ならびに格差や税制について考える上での基礎資料集を目指しました。
紹介した中でも『私たちはなぜ税金を納めるのか―租税の経済思想史―』は計42冊を売り上げたのですが、紹介次第で到底キャッチーとは言えないカタい内容の本でもちゃんと興味を持ってもらえるのだなーという手応えを感じました。


日本人の宗教観はどこまで外国人と違うのか

主に宗教を軸とした、日本と諸外国との比較文化学の入門書になるような資料を集めています。山本七平を採用したのは純粋な学術的正しさというより、インパクトファクこれ以後の類書への影響の大きさ、ならびに論拠となる主要文献が明示されている点を評価してのことです。
このテーマには切り口が多いので、出来る限り効率よく網羅的に各アプローチを紹介する資料を揃えました。


そろそろ「プログラマー35歳定年説」を徹底論破しとくか

この実験の最後になるので一番オーディエンスを集める記事にしようと思い、無事そうなりました。タイトルにはプログラマーと記載しましたが、そうでない方にも多く読んで頂けたようです。
内容は成人の企業内における職業教育やキャリア形成を考える上で役立つ資料を、経営学的な観点を取り入れつつ揃えています。


文献紹介リンクをアフィリエイトにしたのは、一体どれほどのひとがそれらの資料を心から「読みたい」と思ってくれたかどうかを知りたかったからです。もし資料に対して興味を持っていただいたなら、それらの資料の詳細を知るべくリンクをクリックするはずです。その数を知りたかったのです。結果、総クリック数は9359でした。

また実際に売れた本や興味を集めた本を見ると、本来ならば(失礼ながら)学部生がレポートで嫌々読まされるような本が割と人気です。例えば『脳からみた学習』や『私たちはなぜ税金を納めるのか』などは(どちらも大変面白い本ですが)決して読みやすい本でも話題になった本でもエンタテイメント性の高い本でもなく、その分野に関係のない方が自分から進んで読みたくなるような部類の本ではありません。

しかし、見せ方さえ変えれば一見退屈な学部の教科書だって売れるようです。ユースケースに着目したマーケティングの基本ですが、「誰がターゲットになるか?」という発想を捨てて「この本はどんな問題を解決するか?」と考えれば、自然とその本が持つ本来のメリットをアピールできるように思います。


結論: パスファインダーやブックガイドで十分集客できます。*3

 

おまけ: それでこれからどうするの?

実験用とはいえ、週に1本それなりに内容のある記事を書くのは骨の折れる作業でした。しばらくは充電期間として、がっつりとパスファインダー系記事を書くのはお休みするつもりです。「書架とラフレンツェ」はゆるい読書ブログとして存続していきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

こちらからは以上です!

*1:このようなポリシーに基づいて記事を書いていたため、一部の読者からは「結局結論は何?」といったツッコミを受けましたが、これが総じて記事中では明確な結論を出さなかった理由です。ご容赦ください。

*2:アクセスの総数としてはGunosyの方が多かったのですが、捕捉が早くて密だったのはSmartNewsの方です。やるなスマニュー!

*3:アクセス解析アフィリエイトログ共にこれ以上の細かいデータも色々ありますが、ここでは非公開とさせていただきます。Closedな場であれば喋るかもしれません(?)

図書館学徒が認める最高のオンライン書店はここだ!!

※タイトルは釣りであり、発言は個人の感想です。
※真打は一番最後です。


前回の「【悲報】amazonの書誌情報管理がマジクソな件について」は多くの方にお読みいただき、図書館クラスタ以外の方々からも様々なご感想を頂いた。id:librarius_I 先生には「【報告】「【悲報】amazonの書誌情報管理がマジクソな件について 」を使って授業をやってみた。(追記あり)」で教材としてご使用いただいた結果を教えてもらい、学生さんの反応を興味深く拝読した。
図書館クラスタでないひとたちが書誌情報書誌情報とつぶやいてくださる光景には思わず嬉し涙が出たが、中でも気になったご意見が「Amazon営利企業なのだから、図書館のような厳格な書誌情報管理を求めても仕方がない」というものだ。


実のところ、書誌情報の管理……というか「同じ本」の同定はどこまで厳密にやるべきなのか、という問題には、究極的には合意はとれない。FRBRでも細かい分類がなされているが、古書や博物館の世界では「夏目漱石が所有していた森鷗外謹呈の『高瀬舟』(書き込みアリ)」という「その特別な一冊でなければダメ」という状況が存在する。このような状況下では、出版社がどこだとか版はいくつだなどという事項は最早問題にならない。この場合、図書館も真っ青な書誌情報管理……どころか、個別資料としての管理が行われる。
しかし図書館や一般的な新刊書店では、同一のコンテンツが手に入れば「同じ本」と見なしても実運用上問題がない。この「同一のコンテンツ」であると同定するための紐づけに用いられる情報が書誌情報という訳だ。出版業界の書籍流通では、ISBNが同じであれば同一のコンテンツであるとする規定になっているが、中には岩波書店のように新訳版を旧訳版のISBNに「上書き」するところもあるので注意が必要だ。本当は、そういうのはいけないのだけれど。なお、ISBNの運用ガイドラインについてはオフィシャルサイトに分かりやすい説明がある。ある本が文庫落ちKindle化したときにも異なるISBNコードを付与することになっている、など、興味深いルールが定められている。


書店における書誌情報の表示には食品における情報表示のように法的規制がある訳ではない。だから、Amazonが書籍流通のデファクトスタンダードに反し、営利目的であえて「同じ本」とは思えないものをあたかも「同じ本」と見えるように表示していたとしても、犯罪ではない。その点において「営利企業なんだから仕方ない、問題ではない」とする立場にも一定の理はある。
しかしこれがもし食品で、どんなに安全面や食味でもまったく問題がなかったとしても、例えばスーパーマーケットの日本産ウナギの棚に中国産ウナギが誤認しやすい形で入り混じっていたとしたら、これには腹が立つひとが多いのではないだろうか?「ただ混在させて置いただけで、ひっくり返せばラベルの下に原産国が書いてあるのだから偽装表示には当たらない」と主張されたとして納得できるのだろうか。


我々は社会生活を送る上で、世の中に存在するあらゆるものに一定の信頼をおいて生活している。「銀行員は口座からお金を盗まない」「食品の原産地表示は正しい」「犯罪者は警察が逮捕してくれる」「お店のレジ係は釣銭をごまかさない」といった信頼が崩れている社会では、日常生活にかかるコストが大きく増大してしまう。つまりこうした信頼は社会生活を支える資源の一種とみなすことができ、社会関係資本と呼ばれている。
オンライン書店におけるISBNに基づいた本の紐づけの正しさを社会関係資本に数え上げるかどうかは議論の必要な問題だが、少なくともAmazonは異なるISBNどころか異なる出版社、異なる著者の本を「同じ本」として紐づけていた。出版社が異なるもの同士が紐づけされていた以上、これは出版社側のミスではなくAmazon側の問題だ。意図的なものかどうかは別として、このような問題が発生する可能性をAmazon側が把握し、放置していた以上「営利企業なんだから仕方ない、Amazonはあえて対処する必要はない、利用者の側で気を付ければいい」とは個人的には思わない。新刊本くらい、どの書店でも安心して買える世の中であってほしい物だ。



……それで「じゃあお前がそういう書店をやれよ!」「どこならいいって言うんだよ?!」というお声も頂いたので、今ある他のオンライン書店はどんな感じなのかを軽く図書館学徒目線で紹介する。

honto.jp

http://honto.jp/netstore.html
大日本印刷丸善CHIホールディングスが株主として参加しているトゥ・ディファクト社運営のオンライン書店bk1はここに吸収された。丸善ジュンク堂文教堂と共通のhontoポイントが使えるし、それぞれの店舗検索も可能。紙の本と電子書籍を扱っている。品揃えは新刊本なら十分に豊富だが、中古品は扱っていない。
版型違いの本同士の紐づけは厳格で、電子書籍版の底本になっているもの1冊が紐づいているだけだ。文庫版と分冊版や新書版の紐づけすらない。


実のところ、版型違いを「同じコンテンツ」の掲載された「同じ本」とするかどうかはかなり微妙な問題である。多くの本は違う版型で出版する際に大抵ある程度の「見直し」がされるものだし、特に京極夏彦作品はかなり手を加えられることで有名だ。文庫の場合は巻末に解説が加わることも多い。また、マンガの場合は異なる版型になると収録話数やカラーページの扱いにも違いが出る。そもそもそのサイズや形式であることがとても重要な書籍、たとえば絵本の場合は、「はらぺこあおむし」が文庫落ちをしたところで到底「同じ本」とは思えないだろう。
だから安直に版型違いを「同じ本」として紐づけるべきだとは思わないが、読者の利便性を考えるならば、Amazonのような柔軟な版型違い表示も望ましい。ただそれに限度ってものはあって……となると、始めに戻ってなかなか結論の出ない話ではあるのだけれど。

Honya Club

http://www.honyaclub.com/shop/default.aspx
業界最大手取次である日販(日本出版販売株式会社)のオンライン書店。現時点で電子書籍や中古品の取り扱いはない。リブロや文教堂八重洲ブックセンターなど多くの書店での店頭受け取りに対応しているが、ジュンク堂丸善ブックファーストではできないようだ。やはりHonya Club加盟書店と共通のポイントが利用できる。
なお、こちらも版型違いの紐づけは行っていない。

e-hon

http://www.e-hon.ne.jp/bec/EB/Top
やはり業界大手取次であるトーハンオンライン書店。こちらもやはり全国多くの書店で店頭受け取りが可能。上記と同様に電子書籍と中古品は扱っていない。品揃えが少々見劣りする。

紀伊国屋書店WEBストア

https://www.kinokuniya.co.jp/
大手書店・紀伊国屋オンライン書店。もちろん紀伊国屋とポイントが共通であり、商品ごとに店舗在庫の検索も可能。ただ店舗受け取りはできない。電子書籍の取り扱いもあり、底本となった紙の本と一対一対応している。他の判型違いの紐づけはない。

楽天ブックス

http://books.rakuten.co.jp/
楽天市場オンライン書店。言うまでもないが電子書籍や中古品も扱っている。こちらも本の紐づけは底本となった紙の本と一対一対応しているのみだ。

Yahoo!ブックストア

http://bookstore.yahoo.co.jp/
電子書籍のみを取り扱うオンライン書店電子書籍のみなので、版型違いの紐づけなどということはない。


やはり様々なオンライン書店を見比べると、Amazonの圧倒的な使いやすさは改めて素晴らしいと思える。他の本と混在してさえいなければレビューも豊富で参考になる。ただ、特に都市圏ではリアル書店での受け取りや書店在庫検索はとても便利だから、今日中にどうしても必要な本がある場合は積極的に活用したいサービスだ。


なお、Amazonの特徴として挙げられていた豊富な関連書籍の提示だが、似たような機能を持つサービスがある。あるテーマに関する本をできるだけたくさん知りたい場合は、オンライン書店ではないが国立情報学研究所が運営している以下のサービスが役立つ。

Webcat plus

この「連想検索」というサービスが面白い。キーワードや文章を入力すると、関連する書籍やキーワードを大量に表示してくれるのだ。
右側に表示されているキーワードをクリックすると、どんどん検索結果が洗練されてゆく。大学図書館や研究者向けのサービスであるため、しっかりした内容の本も多く、全く未知の分野の本を調べたい場合に手軽で便利なサービスだ。

当ダイアリはこれからも書籍流通の未来に着目していきたいと思います。