図書館学徒未満

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図書館よ、広報せよ! -----攻めのサービスを展開せよ

本書のサブタイトルにもなっている「図書館アイデンティティ」。一時期ユニバーシティ・アイデンティティやカンパニー・アイデンティティなどが流行ったことがありましたが、浦安図書館は図書館アイデンティティを強く意識して運営されています。


浦安図書館は自らの提供しているサービスを周知させるため、PR活動にかなり力を入れています。

PRという言葉からは、派手な宣伝活動をイメージしがちであるが、サービスそのものこそが最大のPRであると考えたい。
……(中略)……
PRは、漫然と行うのではなく、利用者(一般市民)、市のトップ・議員など政策決定権をもつ者、および、政策決定者に対して影響力をもつ者、自治体の他部局の職員、マスコミ関係者など、対象を明確化し、図書館との関係を考慮したうえで各対象に対して、最も効果的なPRを展開するべきである。また、各対象グループ内の影響力の大きな人物(キーパーソンへの働きかけは、最重要課題である。
議員や首長部局の職員の業務に対し、資料提供やレファレンスなどにより支援することは、サービスを通して図書館の存在理由を示すことになり、最も有効なPR手段である。

(前掲書 p.242)


浦安図書館は議員や市職員のニーズをいち早く掴み取り、先手を取って情報提供をしていくことで、図書館の地位向上に努めてきました。*1また予算獲得についても、綿密な利用調査の結果に基づいて堂々と「我々はこれだけのサービスを提供するのだから、これだけ必要なのでください」と主張し、戦ってきました。


浦安図書館では、ロビー活動や広報活動とは軽佻浮薄な卑しい活動じゃなくて、利用者に更に奉仕できるようになるために必要な活動と捉えられているのです。


「サービスこそ最高のPR手段」という考えから展開される具体的なサービス内容ですが、着目したいのは「クイック・レファレンス」と「積極的な声かけ」です。

「クイック・レファレンス」とは、利用者からリクエストを受けたらその場で処理し、5分以内に利用者の求める資料を提供するサービスです。もちろん複雑なリクエストは専門のレファレンスに回すのですが、このサービスからは、利用者からのリクエストを後回しにせず、即時処理して一刻も早く手元に届ける徹底した図書館の姿勢が見えます。


また、利用者の多い土日には「案内係」の札をつけた職員がフロアを巡回し、困っている利用者がいたら積極的に声をかけるというサービスを提供しています。職員にはなかなか、利用者側から声はかけにくいものです。ランガナタンも積極的に声をかけるべきと主張していることですし、しつこくない程度の声かけはいいのではないしょうか。


ちなみに浦安図書館はこの広報戦略の一環として、建物の外観やインテリア、書架のレイアウトや家具調度品、照明や空調なども一貫したコンセプトを持ち、図書館アイデンティティの確立に努めています。
優れたデザインはこんなところでも役に立っていますね:)
わが国でも海外のお洒落図書館*2に負けないくらい、ステキな図書館が誕生して欲しいものです。

*1:もちろん一般市民に対しても優れたサービスを提供しています。偉い人に対してだけではありません。あしからず。

*2:例: 人類の叡智の宝庫、世界中の美しい図書館20