図書館学徒未満

図書館学に関する本を読んだり調べごとをしたりしています。はてなダイアリーから移行しました。

勉強の意味がわからない人へのブックガイド

※ここに紹介する本はすべてが子ども向けではありません。しかし適切な大人の助けがあれば、どれも中学生でも読み通せるものです。


ちきりんさんを発端とする普通教育課程再構築の話がにぎわっているようです。


わたしは教育学徒ですから、いずれの立場であれこういう話題をきっかけに皆さんが教育学について興味を持って頂ければとても嬉しいですし、ぜひ 『文章読本さん江 (ちくま文庫)』 や『学歴貴族の栄光と挫折 (講談社学術文庫)』でも読んでもらいたいなーと思っております。

なので本稿ではわたしの意見というよりは、
「何のために勉強するのかわからない」とお悩みの中高生や
「子どもにどうやって勉強の面白さを伝えたらいいのか分からない」とお悩みの保護者、教師の方に向けてお送りします。

承前

勉強に対して意義が見出せずやる気がなくなる主な理由は

  1. 勉強という行為が単純に面白くない
  2. 適切なロールモデルやゴールが見えない
  3. 疲労

です。

特に上2つは密接に関連していますが、机に向かってもくもくとドリルを解いたり年表を暗記したりするような作業を「面白い!」と感じるには、相当のモチベーションや目標が必要です。


ここで言う目標なりロールモデルなりは、抽象的なものでは効果を発揮しません。また恐怖心をあおるようなものでも面白さにはつながりません。
「勉強しないとロクな大人になれませんよ!」
「勉強したらいい大学に入っていい会社に入れて年収が上がりますよ」
式のお説教はあまり効果がありません。

かといって、あんまり具体的過ぎて断片的・実際的になってしまっても持続的なモチベーションにはつながりません。
「数学をやると複利について分かるからクレジットカードを持った時に賢く使えますよ!」
と言われても、中高生にとっては
「だから……?」
でしょう。
社会に出た時どんなに役に立つことでも、まだ社会に出ていない子どもにとっては実感がありませんし、そんなことのために毎日8時間も勉強するのかと思うとあまりにも夢がなくてげんなりするかもしれません。


今すでに勉強へのモチベーションにつながる何かワクワクすることがあるならよいですが、そうでないから勉強へのやる気が低下している訳です。勉強のまっすぐ先にあるワクワクを具体的に見せる必要があります。


ですからこのブックガイドでは、勉強の先にはこんなに面白い人生が――いや、数冊の本で語るには人生はあまりにも可能性に満ちています。こんなに面白い冒険が待ってるよ!という観点で本を選定していきます。

勉強したくない子ども、勉強したくなかった大人に送る7冊

橙乃ままれまおゆう魔王勇者

言わずと知れた超有名作ですが、現実の学問の何がどんな風に具体的に実生活に役立つのかを鮮やかに描き出しています。これを読んで経済学部に行きたくなるひとは多いのではないでしょうか?
同著者の『ログ・ホライズン1 異世界のはじまり』もおススメです。これで君もいつ異世界へ飛ばされても安心だ?!

支倉凍砂狼と香辛料

狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (電撃文庫)

引き続きラノベ2つ目です。こちらも説明不要ですかね、とりあえず経済学部へ行きたくなること請け合いです。ホロ可愛いよホロ。

橘玲『亜玖夢博士の経済入門』

亜玖夢博士の経済入門 (文春文庫)

亜玖夢博士の経済入門 (文春文庫)

ビジネス作家として著名な橘玲氏の短編小説集です。人々の悩みを稀代のマッドサイエンティスト賢者である亜玖夢博士が現代の学問成果を駆使して救うのですが、その結果は……?というちょっと笑ゥせぇるすまんみたいな話です。人生の幸せについて考えさせてくれます。
博士を取り巻くキャラクターもとっても魅力的です。「相談無料。地獄を見たら悪玖夢へ」

クリフォード・ストール『カッコウはコンピュータに卵を産む』

カッコウはコンピュータに卵を産む〈上〉

カッコウはコンピュータに卵を産む〈上〉

たった75セントだけ使用料金が合わないことに気づいた新米システム管理者。原因究明の旅はいつのまにか世界を股にかける壮大な戦いに発展して……
ノンフィクションです。1991年の古い本なので今となっては色々と事情の違うところも多いですが、インフラエンジニアってこんなに血沸き肉踊る仕事だったのかー?!とびっくりします。いつも使っている割に仕組みが抽象的で良く分からないインターネットですが、情報を勉強する意欲が湧いてくると思います。
現在再版未定扱いのようですね……高校生のわたしはこれを読んでいて学校をサボったくらい面白かったのですが、再版を期待します。

ウィリアム・パウンドストーン『ビル・ゲイツの面接試験 -富士山をどう動かしますか?』

ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?

ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?

こちらもノンフィクションです。MicrosoftGoogle、いわゆる天才の集う一流企業はどうやって「天才」を見分けているのか?に迫ります。関係者に綿密な取材をした上で歴史的経緯から追っており、ところどころに織り交ぜられる実際のパズルのような面接試験問題もあってどこかミステリのような緊張感のある一冊です。ビル・ゲイツのキャラが立っています。
「勉強しないといい会社に入れませんよ!」の具体的な意味内容がこれでわかるかもしれません(?)

高橋昌一郎『理性の限界』

大勢の立場のひとびとが理性の限界についてシンポジウム形式で語りつくします。選挙って本当に意味あるの?科学と宗教ってどう違うの?などなど、中学二年生なら誰でも考えるようなテーマをとことん、でも分かりやすく突き詰めています。厨二病ニヒリズムに堕ちるのはこれを読んでからにしましょう!

松井優征暗殺教室

暗殺教室 1 (ジャンプコミックス)

暗殺教室 1 (ジャンプコミックス)

現在ジャンプにて大ヒット中のマンガです。説明不要ですかね。やはり高校生の頃、本気で学校を制圧したり誰かを殺したりするにはどうしたらいいかを友だちとアツく語り合った思い出が甦ります。あなたなら殺せんせーをどうやって殺しますか?

番外『できない子は知恵の悪魔と呼ばれるようです』

できない子は知恵の悪魔と呼ばれるようです -このやる夫スレ、まとめてもよろしいですか?
本ではないので番外扱いです。やる夫シリーズですがやる夫出てきません。数学ガールが古代ファンタジー世界で無双?するお話です。テイストとしては先頭の2冊に似ていますね。これで君もいつ異世界に召喚されても安心(ry



如何でしたでしょうか?一冊でも読んでみたいと思えるものがありましたら幸いです。ほかにもサイモン・シン『暗号解読』やスマリヤン『無限のパラドックス』、パウンドストーン『天才数学者はこう賭ける』などなどたくさんご紹介したい本はありましたが、まずは読み易さを優先して上記をセレクトしました。


みなさんのおススメ本もございましたらぜひ教えてください!