図書館学徒未満

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「インターネットが図書館の替わりにならない10の理由」を訳したよ!

で @ofellabuta さんがご紹介下さっていた
「インターネットが図書館の替わりにならない10の理由」
"10 REASONS WHY THE INTERNET IS NO SUBSTITUTE FOR A LIBRARY"
を訳しました。

これはコネチカット州ミルフォードの公共図書館にあった掲示だそうです。元の著者はウィンスロップ大学のMark Y. Herring氏とのこと。
例によって意訳超訳で失礼しますが、タイプミスや文意の違うところがあったらどうぞご指摘をお願いいたします。

1. インターネットに全てがある訳じゃない "Not everything is on the Internet."

インターネットの膨大な情報を見てそう思っているのかもしれなないけれど、違う。
良質の調査に対する需要を満たすような資料はほとんどの場合無料じゃない。

"You think so with a billion pages but no.
Most substantive materials that meet the demands for quality research are not free."

2. インターネットで調べ物なんて、干し草の中の針を見つけるようなものだ。"The needle (your search) in the Haystack (the Web)"

どんなサーチエンジンを使おうと、正しい答えを見つけようとあがきながらウェブの海で溺れることになるだろう。

"No matter which search engine you use, you can drown in the web's ocean of materials trying to find the right answer."

3. 品質管理が存在しない。 "Quality control doesn't exist."

素晴らしいオンラインの情報の只中でアレゲ人が陰謀論を唱え、ポルノ屋がカメラを構えている。

"Amid all the great web-based information lurks a kook with a conspiracy theory, and a pornographer with a camera."

4. 知らない事柄が真の致命傷になる。 "What you don't know really does hurt you."

営利目的のデータベースが全文記事を提供していたとしても、それは「全文」じゃない。脚注や式、画像やグラフが抜けている。
時によっては、インターネットは鍵のないレーシングカーのようなものだ。

"Even for-profit databeses offer full-text articles that aren't full text, dropping footnotes, formulae, picture and graphs.
Sometimes the web is like a race car without the keys."

5. 国は本を一冊買って、それをインターネットで全部の図書館に配信してるんでしょ? "States can now buy one book and distribute to every library on the web."

やってません。図書館はお金を節約しようとしているけれど、そんなことはしない。

"-NOT! We all want to save money but this isn't the way."

6. おいお前ら、電子書籍ってどうよ? "Hey bud, what about E-books?!"

どんな電子書籍リーダーも読みづらいね。技術は間違いなくこれから進歩するだろうけれど、今はまだまだ当分先の事だ。

"Reading on any e-reader is a chore. The technology will doubtless improve but it's still more than a generation away."

7. 図書館のない大学ってないの? "Aren't there library-less universities now?"

一言でいえば、ない。ペーパーレス図書館を作ろうとしていた機関はすぐに諦めて普通の図書館を作ったよ!

"In a word, no. Institutions that tried to open with paperless libraries quickly built traditional ones!"

8. でもバーチャル州立図書館ができるんだよね? "But a virtual state library would work, right?"

州が破産しちゃうよ!50万冊の本をデジタル化するのでも -これは小さな図書館一つ分の本だけれど- 10億ドルかかるはずだよ。

"Work at bankrupting the state! To digitize even half a million volumes -a modest library- would cost about one billion dollars."

9. インターネットは広くて浅い(というかちっとも深くない)。 "The Internet: A mile wide, an inch (or less) deep."

インターネットにある情報の大部分が高々15年前のものだ。更なる情報を得るにはちゃんとした図書館が必要。

"Most of what's on the Internet is only about 15 years old. If you want more, you must have a full-service library."

10. インターネットは遍在するが本は携帯できる。 "The internet is ubiquitous but books are portable."

火の傍に縮こまってノートPCを使うとか、雪の降る晩に携帯だけ持って森に立ち寄るとかやってごらん。未来にはできるようになるだろうけれど、今、大多数の人は -例えネットばっかり見ている人でも- まだ本が欲しいと思ってるよ。

"Try curling up by the fire with a laptop, or stopping by the woods on a snowy evening with a handheld. The future may bring this, but for now the vast majority of readers -even online readers- still want books."



……如何でしたでしょうか?
ちょっと保守的?手前味噌すぎるかな?と思う部分もありますが、まぁー確かにまだまだインターネッツ電子書籍のみで生活できるという域には達していないのは本当だと思います。


元記事のコメント欄も賛否両論繰り広げられていて興味深いです。「古臭すぎる」という意見もあれば「大体賛成だけれど電子書籍はいいよ!」という各論に関するコメントもあり、場所としての図書館の価値を重視する意見も見られます。


しかしアメリカの図書館はみんなもっと先進的だと思っていたのですが、こういう保守的な考えの図書館もあるのだなーというのはちょっと意外でした。
でも、そもそもこんな愉快な掲示を館内に出しちゃう時点で大分先進的に見えますねw


ぜひ、皆さんのご感想もお聞かせ下さい。