図書館学徒未満

図書館学に関する本を読んだり調べごとをしたりしています。はてなダイアリーから移行しました。

地域・観光・図書館

id:arg さんが発起人でおられます
「地域と観光に関する情報サービス研究会(マレビトの会)」
の名称が決定したそうです。分かりやすく親しみやすいお名前だと思います。おめでとうございます。

私は個人的事情(当分予定が立て込んでいる)につき本研究会への参加はできませんが、地域と観光と情報サービスというテーマは大変興味があり、皆様のご研究の進展を楽しみにさせて頂きたいと思います。

こちらの研究会のTwitterハッシュタグは " #tralib " です。
勝手ながらご紹介させて頂きます。


以下、賑やかしがてら今現在自分が「地域・観光・情報サービス(図書館)」について具体的に何を考えているかについて書きます。

図書館が地域の観光に関わる4つの切り口

図書館が地域の観光を支援する際のアプローチは、大体下記のような切り口があるのではないかと思います。

  • 観光する人(一般客)―観光される人(観光サービス提供事業者)
  • まだ現地に来ていない―もう現地に来ている
  • 図書館の中でやる―図書館の外でやる
  • 自地域向け―他地域向け(場所としての意味だけではなく、コミュニティとしての「地域」)

これらはパキっと分けられるようなものではなく、連続的なものです。これらの要素を任意に組み合わせることで、さまざまな支援策を想定できるかと思います。

例えば、「これから観光する一般客に対し・図書館の中でやる」支援は、「地球の歩き方」や「るるぶ」などを館内に取り揃えたりすることでしょう。また観光サービス提供事業者に対し「まだ現地に来ていない」人を呼び込むためのセミナーを「図書館内で」開催する、という方向の支援もあり得ます。
「もう現地に来た」一般客に対し「他地域に向けて」行う支援は、リピートしてもらう、ファンになってもらうための情報提供ということになるでしょうか。

他地域から観光客を呼び込むために、自地域の観光関連資料を他地域に提供する、という支援もあるでしょう。公共図書館がこういう目的で他地域に直接資料を送りつけるのは現実的ではないかもしれませんが、自治体の観光局が他地域向けPRのための資料収集を自地域の図書館に依頼するのは十分にあり得る話です。


図書館の外で行う支援は、勿論Webを活用したサービスも含まれます。観光に必要な情報は観光ガイドを見るだけでは情報量・速報性共に不十分です。最近は国や自治体ごとに観光客向けのWebサイトを立ち上げていたりしますので、そういったオフィシャルな信頼できるオンライン情報の提供も図書館の得意とするところです。


図書館は旅行代理店ではありませんから、あんまり図書館らしからぬ支援策はよろしくないかもしれませんが、それでも保守的な図書館業界、ちょっとびっくりするようなアイデアを出すくらいでちょうどいいかもしれませんw

観光客を呼び込みたい!

個人的に興味のある分野は「他地域から観光客を呼び込むために観光サービス事業提供者に対して行う支援策」です。

  • 観光関連統計情報の提供
  • 参考になる他の観光地の事例提供
  • 観光関連セミナー開催
  • 観光関連情報交換用プラットフォームの整備
  • 観光事業者間マッチング機会の提供
  • 他地域との観光客交換

といった策があるのかなーと現段階では考えています。


特に最後の「他地域との観光客交換」ですが、これを図書館が頑張るとしたらどんなに楽しいことになるのかな?というのが現在の最大の関心事です。
この観光客交換、国家レベルではよく行われているのですが、国内観光では鉄道会社がやっているくらいで他にあまり事例を見ません。しかし考えてみれば合理的な策で、どうせ自地域の人は地元に観光マネーを落とさないのですから、他所に自地域の人を観光に行かせる代わりに、他所から人に来てもらう、ということですね。


これ、考えようによっては色々面白いんじゃないでしょうか?


お互いがお互いの地域から観光客を呼び込むために頑張る、ということは、その地域同士がコラボするということです。つまり、宮崎県と新潟県の図書館がそれぞれの地域でお互いの魅力をたたえ合ったりするのですね。
これで、お互いに観光に対する新たなヒントも得られると思います。「宮崎県の人が考える新潟の魅力」、新潟県民なら聞いてみたいのではないでしょうか?


日本で一番の人口と、おそらく可処分所得を抱えているのは東京ですから、結局東京から観光客を呼び込まないとあまり意味はないかもしれません。少なくとも関西の国内観光では、東京から人を呼び込むことばっかり考えています。

しかし東京を絡めようと絡めまいと、観光を通じて図書館同士横のつながりができるのは結構楽しいんじゃないかなと思います。
他館訪問がお好きな図書館員の方も多いかと思いますが、普段ILLでやり取りしている資料とはまた違った他館提供の観光資料を眺めるようになると、他館訪問のモチベーションもまた上がるのではないでしょうか?

PR力や企画力という点でまだまだ課題が多い公共図書館ですが、「観光」を通じて他館と学び合える関係ができたら素敵だな、と思います。


ちなみに、図書館の話は1ビットも出てきませんが、以下の本が観光と情報提供というテーマで参考になりました。もしご興味がございましたらどうぞ。

ソフトパワー時代の外国人観光客誘致

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