一人で組織を回すには - 「ワンパーソン・ライブラリーを運営する能力と性格に関するチェックリスト」を訳したよ!
カレントアウェアネスで紹介されていた「ワンパーソン・ライブラリーを運営する能力と性格に関するチェックリスト(記事紹介) | カレントアウェアネス・ポータル」を訳してみました。原文はこちらです。すっごく遅いネタで申し訳ありません……。
図書館員向けではありますが、実際に1人である程度の組織を回しているような立場のひとなら結構頷かされるものがあるかもしれません。
時間管理
- やるべきことを書き出し、予定を立てている。
- 大きなタスクを小さなタスクに分解し、より実行可能なタスクにして優先順位づけをしている。
- 利用者を最優先し、予定を再編成できるくらいに柔軟である。
変化の管理
- 自分の組織の中や同僚たちの間で何が起こっているかを知るために時間を取っている。
- 変化を受け入れている(あるいは最低でも変化を受け入れられるような方法を探している)。
- 変更事項を伝え、実行に移すよう支援している。最終的に、自分が情報の発信源となっている。
ストレス管理
- 1日の中で休憩をとり、ワークライフバランスの重要性を理解している。
- 新しい視点に立って自分の予定や仕事、そして環境を大なり小なり変化させている。
- 専門家としての役割遂行や能力の向上に時間を取っている。
マーケティング
- マーケティングは利用者のコミュニティに利益をもたらす重要な活動だと信じている。
- 利用者に対して図書館サービスや資料を提示する機会を探している。
- ソーシャルメディアやブログのような、利用者とコミュニケーションする新しい手段を探すのが好きだ。
専門性の向上
- 昨年、オンラインセミナーやポッドキャストに参加した。
- 図書館情報学会でちゃんと活動している会員だ。
- 図書館情報システムやサービスについて疑問があった場合に相談できる同業者のコミュニティに所属している。
資料の拡充
- 必要な資料を特定するために利用者や管理者と相談している。
- 資料選定基準を定義する図書館の方針を書いている。
- 定期的に資料を評価し、データに基づいた予算の決定を行っている。
情報技術
- いつも腕まくりしてトナーを補充したり、スキャンや印刷の仕方をユーザーに説明している。
- スマートフォンやタブレットを持っており、様々なOSやUIの問題解決ができる。
- 自組織の情報系スタッフにインターネットセキュリティについて相談しており、ソフトウェアは最新の物を使っている。
目録や刊行物の管理
- カタロギングは重要な作業であり、資料を利用可能にするためにはきちんと登録されている必要があるべきだと信じている。
- カタロギングについて疑問があるとき、どこを調べればいいか知っている
- 雑誌や書籍資料の選書にあたり、予算やスペース、利用者の要望や利用状況を考慮している
スコア
当てはまる項目1つにつき1点加算して、合計点がスコアになります。
20-24点 | あなたは一人図書館の運営にとても向いています!多彩なスキルとひとに手を差し伸べようという意志があれば、業務とそれに関連する個性の調和を取るのに何の問題もないでしょう。 |
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16-19点 | 当てはまらなかった項目を見直してみましょう。それらを改善する時間を取ってみてはいかがですか?他の一人図書館員と話してみて、これが自分の進む道なのかどうかを考えてみましょう。 |
0-15点 | 一見すると、あなたは一人図書館の運営にとても向いているとは言えないようです。心配しないで - 図書館情報学分野には他の立場と技能で図書館利用者に奉仕できる多様な進路があります。。 |
如何でしたでしょうか?最後であっさり突き放しているのがちょっと気になりますが、向いている仕事を選ぶのが一番ですよね☆
(※図書館話です)主人がパスファインダーブログを開設して一か月が経ちました……
タイトルは釣(ry
事の発端は畏友 id:Koshian 氏とのこんな会話でした。
@liliput_xxx なるほどパスファインダー。俺らがポインタと呼ぶやつですね。今ならアフィリエイトでそうした仕事にも報酬が得られる可能性もありますし、すばらしい仕事になる予感がしますね
— Sugano Yoshihisa(E) (@koshian) December 29, 2014
ではやってみようということでできたのが『書架とラフレンツェ』というブログ内にある以下の記事です。
それでも「好きなことで、生きていく」。慈悲はない。 - 書架とラフレンツェ
嘘つきヤリ捨て男にムカついたときのおススメ小説&映画 - 書架とラフレンツェ
採用で失敗しない、たった一つの冴えたやり方 - 書架とラフレンツェ
なぜ、お金持に増税してはいけないの? - 書架とラフレンツェ
日本人の宗教観はどこまで外国人と違うのか - 書架とラフレンツェ
そろそろ「プログラマー35歳定年説」を徹底論破しとくか - 書架とラフレンツェ
お陰様ですべてホッテントリ入りしました、ありがとうございますありがとうございます。
それが何だっていうの? - パスファインダーがコンテンツ力を持つということ
パスファインダーの実例は例えばこういうところから確認できます。さすが図書館の外のひとにほとんど存在を知られていないだけあって、失礼ながら目が滑るレベルのつまらなさです。ただ、よく見ると《ケース3:離婚したら年金はどうなるの?》など、掘り下げればもっと面白くなりそうなテーマも散見されます。
もったいない、実にもったいない。
パスファインダーは利用者を面白がらせるものではない、という話はその通りです。パスファインダーは問題解決のツールであり、エンタテイメントではありません。そのことは大前提として、今回はそれでも「その問題に関心がある」「その問題を解決したいと思っている」ひとに"刺さる"ために、あえてコンテンツ力を高めて多くのひとに見てもらうよう作成しました。どんな素晴らしい問題解決ツールも、それを必要としているひとに届かなければ意味はない、と思うからです。
特定のカテゴリに属する消費者に確実に選好されることを、マーケティング業界のジャーゴンで「刺さる」と言います。パスファインダーにとって"刺さる"ことは、それが問題解決のツールだからこそ必要な特性なのではないかとも考えています。
そして、そもそも問題解決はコンテンツとして面白いものです。それは"刺さる"情報だからです。クリステンセン先生の言葉を引くまでもなく、情報を求めるひとは常に問題を抱えており、それを解決したいと考えています。ヒマつぶしのためにダラダラTwitterを眺めているひとですら「ヒマを何とかしたい」という問題を抱えているものです。
だから、図書館が持つパスファインダやブックガイドをそれなりに面白いコンテンツに仕立て上げるのは、単なる話題作り以上に意義のある試みだと思っています。
一体どうやったの? - コンテンツ力のあるパスファインダーの作り方
失礼ながら一般的なパスファインダがコンテンツとしてつまらないのは、それがカバーする範囲が広すぎて意味がある情報に見えないからです。意味のある情報はパーソナルに見えるものです。万人受けするようには見えません。
何故かというと「問題」はパーソナルなものだからです。そもそも「その問題を抱えているひと」という括りを適用した時点で対象者が限定されるのはもちろんなのですが、問題を抱えているひとはみんな「自分だけがこの問題で悩んでいる」と思っているという心理的特性があります。ですから閲覧者は万人に当てはまるように見える情報を避ける傾向があります。それはある意味合理的な情報探索行動です。同じ問題でも解決策は色々あり、ひとによってどれが最適かは異なるからです。
だから、一見ニッチで「こんな細かい話気にする奴いるの?」と思えるほどに絞り込み具体性を高めたトピックの方が、結果的に多くのひとに刺さることになります。
記事の作成に当たっては出来る限りタイトルを「そのトピックに興味を持つひとにとって」キャッチ―なものにするようにしました。キャッチーな釣りタイトルそれ自体はいわゆる「リンクベイト」と呼ばれるややブラックハットなSEO技術ではありますが、いまどき単なるリンクベイトでは衆目を集められません。"釣る"相手として、記事中で取り扱っている問題に興味を持つひとを想定し、あくまでそのひとたちにウケやすいタイトルをつけました。また記事中の言葉遣いも、想定する対象読者に合ったものにしています。内容さえしっかりしていれば、釣りタイトルでもちゃんと読んでもらえるし拡散されるということも実証できました。
一般的なパスファインダーの作り方はこちらなどに紹介されています。加えて、やはりおそらく一般的なパスファインダー作成者の皆様が留意されているだろう以下の点には注意しました。
- 特定の結論を押し付けないようにする。地の文で述べる"自説"は一般論にとどめる。 *1
- 紹介する資料は原則として学術的に公正なものを選ぶ
- トピックに対して可能な限り網羅的な情報が提供できるように資料を選ぶ
加えて、オンラインで不特定多数に役立ててもらうに当たって以下の点にも気をつけました。
- その資料を選んだ理由を書く。記事内でトピックに含まれる論点を解体して再構築し、資料の案内においてストーリーを作る
- 可能な限り入手しやすい資料を選ぶ(絶版・再版未定本を除外する)
- 学部2年生程度の知識で読み通せる難易度までの資料を選ぶ
資料は1記事につき上記基準に合致するもの20-30冊程度を選び、そこから取捨選択しました。
わたしの専門は教育学と経営学領域なのでその辺りは自力での資料選択を行いましたが、その他分野にかかる一部の記事内容については各分野のエキスパートレビューを受けています。ご協力いただきました皆様にはこの場で再度お礼を申し上げます。ありがとうございました。もちろん、文中の誤りやその他至らぬ点の責任は一切わたしにございますことは言うまでもありません。
なお、個人的にはパスファインダーはレファレンス依頼におけるFAQのように捉えておりまして、つまり「ある程度繰り返される(ことが想定される)質問や相談に対する回答をあらかじめ文書にしたもの」であればなんでもアリだと思っております。パスファインダー極左です(キリッ)。
ただパスファインダーというからには、調査方法について踏み込んだ言及ももっと必要だったと思っており、そこは今後同様の記事を書くならば取り組んでみたい改善点です。
それでどうなったの? -アクセスログとアフィリエイト収益から見るコンテンツ力
冒頭に上げた7記事で総アクセス数は約13万、読者登録数は100人を超え、アフィリエイト(Amazon アソシエイト)収益は約23,000円でした。
また、売り上げた本のうち約半分はKindle版でした。基本的にKindle版が存在する場合、Kindle版の方から優先的に購入されていきました。
流入元ははてなブックマークが最も多く、次にGunosy、Twitter、SmartNewsの順でした。しかしながら記事によっては様相が違うものもあり、GIGAZINEやLifehacker、まなめはうすなどからのまとめの流入が多い記事もありました。オーガニック検索からの流入は全体の10%程度ですが、これはブログ開設からあまり期間がなかったことなども考え合わせるとそんなものだろうと思います。
以下、記事ごとに詳細を解説いたします。
主に企業内での職業訓練時のモチベーションコントロールについて関連書籍を紹介しています。教育活動全般に広く応用できる内容を目指しました。
時節柄このテーマについて関心の高い方が多かったようで、第二位のアクセス数を集めています。Gunosy砲の影響も全アクセス数の1/3ほどありました。*2
職業・キャリア形成について悩んでいるひとに対して、少し大局的な視座を提供する資料を選びました。あまり質問に答えているものではなく、どちらかというとブックガイドです。紹介している資料は一見ハウツー本に見えるものの、実は視野を広げ閉塞感を緩めるのに効果的なものを選んでいます。
これもパスファインダーではなくブックガイドですね。タイトルの通りです。これだけは計画的に書いたものではなく、当時インターネッツ上で話題になっていたトピックの便乗記事的なものです。
「採用」というテーマをメインにしているものの、中身は企業内での実践的な能力評価の話です。能力評価に特化したのですが、これに対して「採用後の教育は考えなくてもいいということ?」というお問い合わせが散見されたので続編として「そろそろ「プログラマー35歳定年説」を徹底論破しとくか」を書きました。
特に文中では触れなかったのですが、狙い通り「ピケティのことかーッ!!」な閲覧者がたくさん来訪されました。記事内容はピケティ本を読む上でもピケティ関係なくても役に立つような富裕層に対する社会学的な実態調査、ならびに格差や税制について考える上での基礎資料集を目指しました。
紹介した中でも『私たちはなぜ税金を納めるのか―租税の経済思想史―』は計42冊を売り上げたのですが、紹介次第で到底キャッチーとは言えないカタい内容の本でもちゃんと興味を持ってもらえるのだなーという手応えを感じました。
主に宗教を軸とした、日本と諸外国との比較文化学の入門書になるような資料を集めています。山本七平を採用したのは純粋な学術的正しさというより、インパクトファクこれ以後の類書への影響の大きさ、ならびに論拠となる主要文献が明示されている点を評価してのことです。
このテーマには切り口が多いので、出来る限り効率よく網羅的に各アプローチを紹介する資料を揃えました。
この実験の最後になるので一番オーディエンスを集める記事にしようと思い、無事そうなりました。タイトルにはプログラマーと記載しましたが、そうでない方にも多く読んで頂けたようです。
内容は成人の企業内における職業教育やキャリア形成を考える上で役立つ資料を、経営学的な観点を取り入れつつ揃えています。
文献紹介リンクをアフィリエイトにしたのは、一体どれほどのひとがそれらの資料を心から「読みたい」と思ってくれたかどうかを知りたかったからです。もし資料に対して興味を持っていただいたなら、それらの資料の詳細を知るべくリンクをクリックするはずです。その数を知りたかったのです。結果、総クリック数は9359でした。
また実際に売れた本や興味を集めた本を見ると、本来ならば(失礼ながら)学部生がレポートで嫌々読まされるような本が割と人気です。例えば『脳からみた学習』や『私たちはなぜ税金を納めるのか』などは(どちらも大変面白い本ですが)決して読みやすい本でも話題になった本でもエンタテイメント性の高い本でもなく、その分野に関係のない方が自分から進んで読みたくなるような部類の本ではありません。
しかし、見せ方さえ変えれば一見退屈な学部の教科書だって売れるようです。ユースケースに着目したマーケティングの基本ですが、「誰がターゲットになるか?」という発想を捨てて「この本はどんな問題を解決するか?」と考えれば、自然とその本が持つ本来のメリットをアピールできるように思います。
結論: パスファインダーやブックガイドで十分集客できます。*3
おまけ: それでこれからどうするの?
実験用とはいえ、週に1本それなりに内容のある記事を書くのは骨の折れる作業でした。しばらくは充電期間として、がっつりとパスファインダー系記事を書くのはお休みするつもりです。「書架とラフレンツェ」はゆるい読書ブログとして存続していきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
こちらからは以上です!
図書館学徒が認める最高のオンライン書店はここだ!!
※タイトルは釣りであり、発言は個人の感想です。
※真打は一番最後です。
前回の「【悲報】amazonの書誌情報管理がマジクソな件について」は多くの方にお読みいただき、図書館クラスタ以外の方々からも様々なご感想を頂いた。id:librarius_I 先生には「【報告】「【悲報】amazonの書誌情報管理がマジクソな件について 」を使って授業をやってみた。(追記あり)」で教材としてご使用いただいた結果を教えてもらい、学生さんの反応を興味深く拝読した。
図書館クラスタでないひとたちが書誌情報書誌情報とつぶやいてくださる光景には思わず嬉し涙が出たが、中でも気になったご意見が「Amazonは営利企業なのだから、図書館のような厳格な書誌情報管理を求めても仕方がない」というものだ。
実のところ、書誌情報の管理……というか「同じ本」の同定はどこまで厳密にやるべきなのか、という問題には、究極的には合意はとれない。FRBRでも細かい分類がなされているが、古書や博物館の世界では「夏目漱石が所有していた森鷗外謹呈の『高瀬舟』(書き込みアリ)」という「その特別な一冊でなければダメ」という状況が存在する。このような状況下では、出版社がどこだとか版はいくつだなどという事項は最早問題にならない。この場合、図書館も真っ青な書誌情報管理……どころか、個別資料としての管理が行われる。
しかし図書館や一般的な新刊書店では、同一のコンテンツが手に入れば「同じ本」と見なしても実運用上問題がない。この「同一のコンテンツ」であると同定するための紐づけに用いられる情報が書誌情報という訳だ。出版業界の書籍流通では、ISBNが同じであれば同一のコンテンツであるとする規定になっているが、中には岩波書店のように新訳版を旧訳版のISBNに「上書き」するところもあるので注意が必要だ。本当は、そういうのはいけないのだけれど。なお、ISBNの運用ガイドラインについてはオフィシャルサイトに分かりやすい説明がある。ある本が文庫落ちやKindle化したときにも異なるISBNコードを付与することになっている、など、興味深いルールが定められている。
書店における書誌情報の表示には食品における情報表示のように法的規制がある訳ではない。だから、Amazonが書籍流通のデファクトスタンダードに反し、営利目的であえて「同じ本」とは思えないものをあたかも「同じ本」と見えるように表示していたとしても、犯罪ではない。その点において「営利企業なんだから仕方ない、問題ではない」とする立場にも一定の理はある。
しかしこれがもし食品で、どんなに安全面や食味でもまったく問題がなかったとしても、例えばスーパーマーケットの日本産ウナギの棚に中国産ウナギが誤認しやすい形で入り混じっていたとしたら、これには腹が立つひとが多いのではないだろうか?「ただ混在させて置いただけで、ひっくり返せばラベルの下に原産国が書いてあるのだから偽装表示には当たらない」と主張されたとして納得できるのだろうか。
我々は社会生活を送る上で、世の中に存在するあらゆるものに一定の信頼をおいて生活している。「銀行員は口座からお金を盗まない」「食品の原産地表示は正しい」「犯罪者は警察が逮捕してくれる」「お店のレジ係は釣銭をごまかさない」といった信頼が崩れている社会では、日常生活にかかるコストが大きく増大してしまう。つまりこうした信頼は社会生活を支える資源の一種とみなすことができ、社会関係資本と呼ばれている。
オンライン書店におけるISBNに基づいた本の紐づけの正しさを社会関係資本に数え上げるかどうかは議論の必要な問題だが、少なくともAmazonは異なるISBNどころか異なる出版社、異なる著者の本を「同じ本」として紐づけていた。出版社が異なるもの同士が紐づけされていた以上、これは出版社側のミスではなくAmazon側の問題だ。意図的なものかどうかは別として、このような問題が発生する可能性をAmazon側が把握し、放置していた以上「営利企業なんだから仕方ない、Amazonはあえて対処する必要はない、利用者の側で気を付ければいい」とは個人的には思わない。新刊本くらい、どの書店でも安心して買える世の中であってほしい物だ。
……それで「じゃあお前がそういう書店をやれよ!」「どこならいいって言うんだよ?!」というお声も頂いたので、今ある他のオンライン書店はどんな感じなのかを軽く図書館学徒目線で紹介する。
honto.jp
大日本印刷、丸善CHIホールディングスが株主として参加しているトゥ・ディファクト社運営のオンライン書店。bk1はここに吸収された。丸善、ジュンク堂、文教堂と共通のhontoポイントが使えるし、それぞれの店舗検索も可能。紙の本と電子書籍を扱っている。品揃えは新刊本なら十分に豊富だが、中古品は扱っていない。
版型違いの本同士の紐づけは厳格で、電子書籍版の底本になっているもの1冊が紐づいているだけだ。文庫版と分冊版や新書版の紐づけすらない。
実のところ、版型違いを「同じコンテンツ」の掲載された「同じ本」とするかどうかはかなり微妙な問題である。多くの本は違う版型で出版する際に大抵ある程度の「見直し」がされるものだし、特に京極夏彦作品はかなり手を加えられることで有名だ。文庫の場合は巻末に解説が加わることも多い。また、マンガの場合は異なる版型になると収録話数やカラーページの扱いにも違いが出る。そもそもそのサイズや形式であることがとても重要な書籍、たとえば絵本の場合は、「はらぺこあおむし」が文庫落ちをしたところで到底「同じ本」とは思えないだろう。
だから安直に版型違いを「同じ本」として紐づけるべきだとは思わないが、読者の利便性を考えるならば、Amazonのような柔軟な版型違い表示も望ましい。ただそれに限度ってものはあって……となると、始めに戻ってなかなか結論の出ない話ではあるのだけれど。
Honya Club
業界最大手取次である日販(日本出版販売株式会社)のオンライン書店。現時点で電子書籍や中古品の取り扱いはない。リブロや文教堂、八重洲ブックセンターなど多くの書店での店頭受け取りに対応しているが、ジュンク堂や丸善、ブックファーストではできないようだ。やはりHonya Club加盟書店と共通のポイントが利用できる。
なお、こちらも版型違いの紐づけは行っていない。
紀伊国屋書店WEBストア
大手書店・紀伊国屋のオンライン書店。もちろん紀伊国屋とポイントが共通であり、商品ごとに店舗在庫の検索も可能。ただ店舗受け取りはできない。電子書籍の取り扱いもあり、底本となった紙の本と一対一対応している。他の判型違いの紐づけはない。
Yahoo!ブックストア
電子書籍のみを取り扱うオンライン書店。電子書籍のみなので、版型違いの紐づけなどということはない。
やはり様々なオンライン書店を見比べると、Amazonの圧倒的な使いやすさは改めて素晴らしいと思える。他の本と混在してさえいなければレビューも豊富で参考になる。ただ、特に都市圏ではリアル書店での受け取りや書店在庫検索はとても便利だから、今日中にどうしても必要な本がある場合は積極的に活用したいサービスだ。
なお、Amazonの特徴として挙げられていた豊富な関連書籍の提示だが、似たような機能を持つサービスがある。あるテーマに関する本をできるだけたくさん知りたい場合は、オンライン書店ではないが国立情報学研究所が運営している以下のサービスが役立つ。
この「連想検索」というサービスが面白い。キーワードや文章を入力すると、関連する書籍やキーワードを大量に表示してくれるのだ。
右側に表示されているキーワードをクリックすると、どんどん検索結果が洗練されてゆく。大学図書館や研究者向けのサービスであるため、しっかりした内容の本も多く、全く未知の分野の本を調べたい場合に手軽で便利なサービスだ。
当ダイアリはこれからも書籍流通の未来に着目していきたいと思います。
【悲報】amazonの書誌情報管理がマジクソな件について
Amazonで『不思議の国のアリス』を買おうとします
↓
Kindle版があるのでクリックします
↓
!!!!????
結論から言おう。Amazonはルイス・キャロル原作の『不思議の国のアリス』というタイトルの本なら絵本と文庫本はおろか、訳者が違おうが出版社が違おうが「全部同じ本」として扱っている。
もうちょっと細かい話をする。Amazonは商品管理においてASINコードと言う独自の商品管理番号を使用しており、このASINコードは全世界のAmazonで共通なのだが、それが本の場合はその本のISBN10桁をそのままASINコードとして使用している。それで、角川文庫版の『不思議の国のアリス』と、たとえば「単行本」をクリックしたら出てくる集英社版の『不思議の国のアリス』は、それぞれ "4042118038" と "4082740252" という異なるISBN==ASINコードが振られており、厳密には異なる本として登録されている。ただ、利用者に提示するインタフェースとしてはあくまで「同じ本の判型違い」扱いなのだ。
ある本とある本が同じ、とはどういう意味だろうか。図書館情報学分野にはFRBR(書誌レコードの機能要件)という細かい話もあるのだが、基本的に学術分野では「著者」「出版社」「出版年」「書名」が同一ならば同じ本として扱われる。また、商業出版されている本ならばISBNというものが割り振られており、ISBNが同一ならば事実上同じ本と見なされる。とは言っても、ISBNは使いまわしされることもあるので完全にユニークとは言い難い部分もあるのだけれど。
とにかく、ある本を同定するために必要な情報を「書誌情報」という。これがはっきりしないと、誰かがブログで引用していた面白い本をAmazonや図書館で探すことができない。とはいっても、Amazonにこんなことをされたのでは書誌情報が分かったところで「同じ本」を簡単に入手できないのだけれど。
例え書誌情報の一部が異なっても、実用上は「同じ本」とされてもあまり問題ないものはある。たとえば京極夏彦『姑獲鳥の夏』には講談社ノベルス版と講談社文庫版がある。講談社文庫版の方が後から出版されたために出版年度が異なるが、ほとんどの場合は「同じ本」扱いされてもそれほど困らないだろう。判型が異なるとページ数が変わってくるので、引用文献としてページ数を指定する必要がある場合は「違う本」とするべきなんだが。
ただ『不思議の国のアリス』は原著者こそ一人なものの、異なる多くの挿絵画家によって挿絵が書かれており、異なる多くの翻訳者によって翻訳され、異なる多くの出版社から異なる多くの判型によって出版されている。いくらなんでも、子ども向けアニメ絵本と柳瀬尚紀訳のアリスを「同じ本」として扱うのは無理がありすぎるのではないか。
Amazonはこの調子で異なるアリスのレビューも全部ひとまとめにブチこんでいるため、たとえば以下のように大変な風評被害が発生している。
★★★★★ スラスラ読める「アリス」
今まで「不思議の国のアリス」は誰の訳を読んでも何を書いてあるのかまったく分からなかったのですが、この河合祥一郎氏の訳は面白いです。ちゃんと小説として成り立っております。さぞ研究なされたのでしょう。
懐中時計を持ったウサギを追いかけて、穴に落ちて、いろんな目に遭って…次から次へ巻き起こる珍事件怪事件、私にはこれを楽しめる日は来ないのではないかと思っていましたし、同じ思いの人もたくさんおられることでしょう。でも楽しく読みたいという気持ちはこれで叶いました。
アリスの世界観やテニエルの挿絵は好きだけど、文章が辛かったアナタ、ぜひ角川文庫のアリスご一読を。
このレビューが表示されていたのは集英社文庫版・北村太郎訳のアリスだ。
★★★★★ 希少な本に出会えました, 2014/10/22
このお話をまど・みちおさんの文章で楽しむ事ができるなんて、と探しました。
状態もきれいで、充分鑑賞に堪えます。
お安く手に入れられて、助かりました。
ありがとうございました。
このレビューも表示されていたのは集英社文庫版・北村太郎訳のアリス。しかも新品。
★☆☆☆☆ CDが欠けていた, 2014/10/6
中古を買ったら、CDがついていなかった。
CDが欠けてるならCD無しと、説明をちゃんとつけるべきだ。
このレビューも表示されていたのは集英社文庫版・北村太郎訳のアリスで、当然のことながら元々CDはついていない。
どのレビューも詳細情報を見ればどの「アリス」に対するものなのかが特定できるのだが、そもそも一緒くたに表示されているのがおかしい。関係ないレビューをつけられて訳者や出版社のひとは困惑するのではないだろうか?
また、割とどうしようもないのが以下のような翻訳書の扱いだ。
欲しい本
↓
Kindle版で降ってくる本
見ての通り原著だ。翻訳書の方をKindle化してほしくとも、Kindle版が既に登録されている扱いのため「このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください」のリンクが表示されない。このままでは詰みだ。未来永劫この本はKindleで読めない。
なお、こういった取扱いで個人的に一番イラッときた点は「翻訳者の無視」だ。もちろんある著作の誕生における最大の貢献者は著者自身だろうが、翻訳者もまたその言語におけるその著作の命を吹き込んだ、二人目の著者とも言うべき存在だ。翻訳は誰がやっても同じではない。その訳者だからこそ吹き込まれた本の命というものがあるだろう。その存在がAmazonでは完全に無視され、挙句の果てはこの扱いだ。
これはどちらもAmazonの平田昭吾氏の著者ページだ。『不思議の国のアリス』の、河合祥一朗氏と矢川澄子氏の訳が混じっている。
Amazonさん、さすがにこの書誌情報の取り扱いはメチャクチャではないですか?もうちょっとなんとかなりませんか?
(※追記※)
id:blueboy 一般的な現象ではない。パソコンで確認したら、すべて区別されている。http://j.mp/1B0Yssm http://j.mp/1vo6mFG http://j.mp/1Bg1dEm 特定のマシン環境(Kindle?)でのみ発生するのでは? 悪口を書くなら、もっと調査してから。
本稿で扱った『不思議の国のアリス』はこちら( http://www.amazon.co.jp/dp/4042118038 )のものです。PCで見ようがAndroidで見ようが結果は同じです。
例示された『不思議の国のアリス』では、まず「不思議の国のアリス・オリジナル」は書名が異なるため、別の本として認識されています。また、岩波少年文庫版並びに新書館版については、これらの出版社の出版物について同じ現象が見受けられないため、おそらく出版社側の申し立てにより「別の本」として扱われていのではないかと思われます。
これは推測ですが、Amazonは書名と原著者、あるいは著者のうち一人が一致するならばデフォルトで「同じ本」として扱うのだと思います。それに疑義があれば、申し立てによりその紐付けを解除するオプトアウト式なのではないかなと。
関連書籍を自動的に検出し提示してくれる機能は、Amazonを現在の地位まで押し上げた大きな特徴であり、ユーザーへの恩恵も多いと思います。ただそれならそれで「関連書籍」として提示すればよいだけで、あたかも同じ本の判型違いであるかのように表示するやり方は誤購入にもつながり、よい方法ではないと思います。おそらく、全部の出版社がこの現象をちゃんと認識している訳でもないでしょう。
図書館は年間何冊の本を捨てているか
本日の産経新聞にこんな報道がありました。
「横浜市の図書館、蔵書2万冊不明 無断持ち出し原因」
横浜市立の18図書館で毎年、蔵書全体の0・5%に当たる約2万冊が無断持ち出しなどで所在不明になっていることが16日、監査委員による定期監査で分かった。図書館利用をめぐっては、図書・雑誌の切り抜きや書き込みなど利用者のモラルが問われるトラブルが絶えず、市は「みんなの財産なので大切にしてほしい」と呼びかけている。
平成26年度第1回定期監査結果報告書によると、市内の18館合計の蔵書は約406万冊に上る。
そのうち、今回監査対象となった21年度から25年度までの5年間で、無断持ち出しが原因とみられる不明除籍図書数の平均は年間で1万9024冊だった。
でもこれだけ見せられても、多いのか少ないのかよく分からないですね……
そこで参考までに他の政令指定都市のデータをまとめてみました。
横浜市のように無断持ち出しなどの原因別のデータをまとめているところはあまりなかったので、代わりに「除籍(払出)数」をカウントしています。
図書館は古くなり利用されなくなった本や汚損された本などを毎年廃棄していますが、これを「除籍(払出)」と言います。
除籍になる理由は様々ですが、紛失や悪意ある汚損といったもの以外も含まれていることをご留意ください。
あ、ちなみに横浜市の人口は371万人で、最大の政令指定都市です。
都市名 | 人口 | 図書館数 | 所蔵資料数 | 除籍数 |
---|---|---|---|---|
札幌市 | 194万人 | 39 | 2,570,549 | 68,161 |
仙台市 | 107万人 | 7 | 1,821,568 | 46,062 |
さいたま市 | 126万人 | 24 | 3,445,930 | 124,140 |
千葉市 | 97万人 | 35 | 2,725,401 | 27,239 |
川崎市 | 146万人 | 12 | 1,906,253 | 152,881 |
新潟市 | 80万人 | 23 | 1,619,896 | 72,505 |
名古屋市 | 228万人 | 21 | 3,195,949 | 143,409 |
京都市 | 147万人 | 20 | 1,883,875 | 76,382 |
大阪市 | 268万人 | 25 | 3,967,887 | 100,394 |
神戸市 | 154万人 | 11 | 1,901,841 | 87,333 |
ふー……
政令指定都市全部を網羅できなくてすみません。疲れました。でも大体の傾向は分かっていただけたのではないかと思います。
後出しですみませんが、横浜市立図書館の今年の除籍冊数は170,300冊です。このうち紛失が2万冊弱と言うことですね。
個人的にはなんかこんなもん?という気もしますが、如何でしょうか。
データ出典一覧
札幌市: http://www.city.sapporo.jp/toshokan/guide/sisin/liv/documents/toukei.pdf
仙台市: http://www.city.sendai.jp/kyouiku/simintoshokan/youran/pdf/H25youran.pdf
さいたま市: http://www.lib.city.saitama.jp/guide/plan_report/digest_H26.html
千葉市: http://www.library.city.chiba.jp/outline/pdf/tokei_2013.pdf
川崎市: https://www.library.city.kawasaki.jp/pdf/regulations/24toukei.pdf
新潟市: http://www.niigatacitylib.jp/hakkou/yoran/H25yoran.pdf
名古屋市: https://www.library.city.nagoya.jp/img/guide/nenpou_h25.pdf
京都市: http://www2.kyotocitylib.jp/?action=common_download_main&upload_id=3111
大阪市: http://www.oml.city.osaka.lg.jp/?action=common_download_main&upload_id=5127
神戸市: http://www.city.kobe.lg.jp/information/institution/institution/library/gaiyo/img/gaiyou13.pdf
勉強したくない子ども、勉強したくなかった大人に送る7冊
橙乃ままれ『まおゆう魔王勇者』
まおゆう魔王勇者 1「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」
- 作者: 橙乃ままれ,toi8
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2010/12/29
- メディア: 単行本
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同著者の『ログ・ホライズン1 異世界のはじまり』もおススメです。これで君もいつ異世界へ飛ばされても安心だ?!
支倉凍砂『狼と香辛料』
- 作者: 支倉凍砂,文倉十
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2006/02
- メディア: 文庫
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橘玲『亜玖夢博士の経済入門』
- 作者: 橘玲
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/06/10
- メディア: 文庫
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博士を取り巻くキャラクターもとっても魅力的です。「相談無料。地獄を見たら悪玖夢へ」
クリフォード・ストール『カッコウはコンピュータに卵を産む』
- 作者: クリフォード・ストール,Clifford Stoll,池央耿
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 1991/09/30
- メディア: 単行本
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ノンフィクションです。1991年の古い本なので今となっては色々と事情の違うところも多いですが、インフラエンジニアってこんなに血沸き肉踊る仕事だったのかー?!とびっくりします。いつも使っている割に仕組みが抽象的で良く分からないインターネットですが、情報を勉強する意欲が湧いてくると思います。
現在再版未定扱いのようですね……高校生のわたしはこれを読んでいて学校をサボったくらい面白かったのですが、再版を期待します。
ウィリアム・パウンドストーン『ビル・ゲイツの面接試験 -富士山をどう動かしますか?』
- 作者: ウィリアムパウンドストーン,松浦俊輔
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2003/06/15
- メディア: 単行本
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「勉強しないといい会社に入れませんよ!」の具体的な意味内容がこれでわかるかもしれません(?)
高橋昌一郎『理性の限界』
理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)
- 作者: 高橋昌一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: Kindle版
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松井優征『暗殺教室』
- 作者: 松井優征
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/11/02
- メディア: コミック
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番外『できない子は知恵の悪魔と呼ばれるようです』
「できない子は知恵の悪魔と呼ばれるようです -このやる夫スレ、まとめてもよろしいですか?」
本ではないので番外扱いです。やる夫シリーズですがやる夫出てきません。数学ガールが古代ファンタジー世界で無双?するお話です。テイストとしては先頭の2冊に似ていますね。これで君もいつ異世界に召喚されても安心(ry
如何でしたでしょうか?一冊でも読んでみたいと思えるものがありましたら幸いです。ほかにもサイモン・シン『暗号解読』やスマリヤン『無限のパラドックス』、パウンドストーン『天才数学者はこう賭ける』などなどたくさんご紹介したい本はありましたが、まずは読み易さを優先して上記をセレクトしました。
みなさんのおススメ本もございましたらぜひ教えてください!
承前
勉強に対して意義が見出せずやる気がなくなる主な理由は
- 勉強という行為が単純に面白くない
- 適切なロールモデルやゴールが見えない
- 疲労
です。
特に上2つは密接に関連していますが、机に向かってもくもくとドリルを解いたり年表を暗記したりするような作業を「面白い!」と感じるには、相当のモチベーションや目標が必要です。
ここで言う目標なりロールモデルなりは、抽象的なものでは効果を発揮しません。また恐怖心をあおるようなものでも面白さにはつながりません。
「勉強しないとロクな大人になれませんよ!」
「勉強したらいい大学に入っていい会社に入れて年収が上がりますよ」
式のお説教はあまり効果がありません。
かといって、あんまり具体的過ぎて断片的・実際的になってしまっても持続的なモチベーションにはつながりません。
「数学をやると複利について分かるからクレジットカードを持った時に賢く使えますよ!」
と言われても、中高生にとっては
「だから……?」
でしょう。
社会に出た時どんなに役に立つことでも、まだ社会に出ていない子どもにとっては実感がありませんし、そんなことのために毎日8時間も勉強するのかと思うとあまりにも夢がなくてげんなりするかもしれません。
今すでに勉強へのモチベーションにつながる何かワクワクすることがあるならよいですが、そうでないから勉強へのやる気が低下している訳です。勉強のまっすぐ先にあるワクワクを具体的に見せる必要があります。
ですからこのブックガイドでは、勉強の先にはこんなに面白い人生が――いや、数冊の本で語るには人生はあまりにも可能性に満ちています。こんなに面白い冒険が待ってるよ!という観点で本を選定していきます。