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図書館学徒未満

図書館学に関する本を読んだり調べごとをしたりしています。はてなダイアリーから移行しました。

図書館学徒が認める最高のオンライン書店はここだ!!

※タイトルは釣りであり、発言は個人の感想です。
※真打は一番最後です。


前回の「【悲報】amazonの書誌情報管理がマジクソな件について」は多くの方にお読みいただき、図書館クラスタ以外の方々からも様々なご感想を頂いた。id:librarius_I 先生には「【報告】「【悲報】amazonの書誌情報管理がマジクソな件について 」を使って授業をやってみた。(追記あり)」で教材としてご使用いただいた結果を教えてもらい、学生さんの反応を興味深く拝読した。
図書館クラスタでないひとたちが書誌情報書誌情報とつぶやいてくださる光景には思わず嬉し涙が出たが、中でも気になったご意見が「Amazon営利企業なのだから、図書館のような厳格な書誌情報管理を求めても仕方がない」というものだ。


実のところ、書誌情報の管理……というか「同じ本」の同定はどこまで厳密にやるべきなのか、という問題には、究極的には合意はとれない。FRBRでも細かい分類がなされているが、古書や博物館の世界では「夏目漱石が所有していた森鷗外謹呈の『高瀬舟』(書き込みアリ)」という「その特別な一冊でなければダメ」という状況が存在する。このような状況下では、出版社がどこだとか版はいくつだなどという事項は最早問題にならない。この場合、図書館も真っ青な書誌情報管理……どころか、個別資料としての管理が行われる。
しかし図書館や一般的な新刊書店では、同一のコンテンツが手に入れば「同じ本」と見なしても実運用上問題がない。この「同一のコンテンツ」であると同定するための紐づけに用いられる情報が書誌情報という訳だ。出版業界の書籍流通では、ISBNが同じであれば同一のコンテンツであるとする規定になっているが、中には岩波書店のように新訳版を旧訳版のISBNに「上書き」するところもあるので注意が必要だ。本当は、そういうのはいけないのだけれど。なお、ISBNの運用ガイドラインについてはオフィシャルサイトに分かりやすい説明がある。ある本が文庫落ちKindle化したときにも異なるISBNコードを付与することになっている、など、興味深いルールが定められている。


書店における書誌情報の表示には食品における情報表示のように法的規制がある訳ではない。だから、Amazonが書籍流通のデファクトスタンダードに反し、営利目的であえて「同じ本」とは思えないものをあたかも「同じ本」と見えるように表示していたとしても、犯罪ではない。その点において「営利企業なんだから仕方ない、問題ではない」とする立場にも一定の理はある。
しかしこれがもし食品で、どんなに安全面や食味でもまったく問題がなかったとしても、例えばスーパーマーケットの日本産ウナギの棚に中国産ウナギが誤認しやすい形で入り混じっていたとしたら、これには腹が立つひとが多いのではないだろうか?「ただ混在させて置いただけで、ひっくり返せばラベルの下に原産国が書いてあるのだから偽装表示には当たらない」と主張されたとして納得できるのだろうか。


我々は社会生活を送る上で、世の中に存在するあらゆるものに一定の信頼をおいて生活している。「銀行員は口座からお金を盗まない」「食品の原産地表示は正しい」「犯罪者は警察が逮捕してくれる」「お店のレジ係は釣銭をごまかさない」といった信頼が崩れている社会では、日常生活にかかるコストが大きく増大してしまう。つまりこうした信頼は社会生活を支える資源の一種とみなすことができ、社会関係資本と呼ばれている。
オンライン書店におけるISBNに基づいた本の紐づけの正しさを社会関係資本に数え上げるかどうかは議論の必要な問題だが、少なくともAmazonは異なるISBNどころか異なる出版社、異なる著者の本を「同じ本」として紐づけていた。出版社が異なるもの同士が紐づけされていた以上、これは出版社側のミスではなくAmazon側の問題だ。意図的なものかどうかは別として、このような問題が発生する可能性をAmazon側が把握し、放置していた以上「営利企業なんだから仕方ない、Amazonはあえて対処する必要はない、利用者の側で気を付ければいい」とは個人的には思わない。新刊本くらい、どの書店でも安心して買える世の中であってほしい物だ。



……それで「じゃあお前がそういう書店をやれよ!」「どこならいいって言うんだよ?!」というお声も頂いたので、今ある他のオンライン書店はどんな感じなのかを軽く図書館学徒目線で紹介する。

honto.jp

http://honto.jp/netstore.html
大日本印刷丸善CHIホールディングスが株主として参加しているトゥ・ディファクト社運営のオンライン書店bk1はここに吸収された。丸善ジュンク堂文教堂と共通のhontoポイントが使えるし、それぞれの店舗検索も可能。紙の本と電子書籍を扱っている。品揃えは新刊本なら十分に豊富だが、中古品は扱っていない。
版型違いの本同士の紐づけは厳格で、電子書籍版の底本になっているもの1冊が紐づいているだけだ。文庫版と分冊版や新書版の紐づけすらない。


実のところ、版型違いを「同じコンテンツ」の掲載された「同じ本」とするかどうかはかなり微妙な問題である。多くの本は違う版型で出版する際に大抵ある程度の「見直し」がされるものだし、特に京極夏彦作品はかなり手を加えられることで有名だ。文庫の場合は巻末に解説が加わることも多い。また、マンガの場合は異なる版型になると収録話数やカラーページの扱いにも違いが出る。そもそもそのサイズや形式であることがとても重要な書籍、たとえば絵本の場合は、「はらぺこあおむし」が文庫落ちをしたところで到底「同じ本」とは思えないだろう。
だから安直に版型違いを「同じ本」として紐づけるべきだとは思わないが、読者の利便性を考えるならば、Amazonのような柔軟な版型違い表示も望ましい。ただそれに限度ってものはあって……となると、始めに戻ってなかなか結論の出ない話ではあるのだけれど。

Honya Club

http://www.honyaclub.com/shop/default.aspx
業界最大手取次である日販(日本出版販売株式会社)のオンライン書店。現時点で電子書籍や中古品の取り扱いはない。リブロや文教堂八重洲ブックセンターなど多くの書店での店頭受け取りに対応しているが、ジュンク堂丸善ブックファーストではできないようだ。やはりHonya Club加盟書店と共通のポイントが利用できる。
なお、こちらも版型違いの紐づけは行っていない。

e-hon

http://www.e-hon.ne.jp/bec/EB/Top
やはり業界大手取次であるトーハンオンライン書店。こちらもやはり全国多くの書店で店頭受け取りが可能。上記と同様に電子書籍と中古品は扱っていない。品揃えが少々見劣りする。

紀伊国屋書店WEBストア

https://www.kinokuniya.co.jp/
大手書店・紀伊国屋オンライン書店。もちろん紀伊国屋とポイントが共通であり、商品ごとに店舗在庫の検索も可能。ただ店舗受け取りはできない。電子書籍の取り扱いもあり、底本となった紙の本と一対一対応している。他の判型違いの紐づけはない。

楽天ブックス

http://books.rakuten.co.jp/
楽天市場オンライン書店。言うまでもないが電子書籍や中古品も扱っている。こちらも本の紐づけは底本となった紙の本と一対一対応しているのみだ。

Yahoo!ブックストア

http://bookstore.yahoo.co.jp/
電子書籍のみを取り扱うオンライン書店電子書籍のみなので、版型違いの紐づけなどということはない。


やはり様々なオンライン書店を見比べると、Amazonの圧倒的な使いやすさは改めて素晴らしいと思える。他の本と混在してさえいなければレビューも豊富で参考になる。ただ、特に都市圏ではリアル書店での受け取りや書店在庫検索はとても便利だから、今日中にどうしても必要な本がある場合は積極的に活用したいサービスだ。


なお、Amazonの特徴として挙げられていた豊富な関連書籍の提示だが、似たような機能を持つサービスがある。あるテーマに関する本をできるだけたくさん知りたい場合は、オンライン書店ではないが国立情報学研究所が運営している以下のサービスが役立つ。

Webcat plus

この「連想検索」というサービスが面白い。キーワードや文章を入力すると、関連する書籍やキーワードを大量に表示してくれるのだ。
右側に表示されているキーワードをクリックすると、どんどん検索結果が洗練されてゆく。大学図書館や研究者向けのサービスであるため、しっかりした内容の本も多く、全く未知の分野の本を調べたい場合に手軽で便利なサービスだ。

当ダイアリはこれからも書籍流通の未来に着目していきたいと思います。