図書館学徒未満

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モスク建設計画に見る差別要素

モスク建設計画難航…地元町会「引き下がって」

はてブでも大変に注目をあつめましたこの事例ですが、「明らかに差別」派と「イスラムを理解できないのは仕方ない、差別にはあたらない」派に分かれているようです。


では具体的に内容を精査していきましょう。

  • 信仰は「本人の努力ではどうしようも」ありません。したがってイスラム教徒であることはムスリムの皆さんが努力で変えられることではないし、これを理由に不利益な扱いをしたら差別にあたります。
  • 宗教施設(モスク)は、もしこれがお寺や神社だったら問題なく建設が可能だったでしょう。他のグループの人ならば得られたはずの機会から排除されています。
  • 町会側は内心でムスリムに対する反感を持っていただけではなく、明確にモスクの建設に反対する宣言を行いました。実際の行動に移しています。
  • 石川ムスリム協会は、モスクの外観に対して市の景観条例に従うと表明しています。建設許可の申請も法令に則ったものです。従って法令違反を理由にした「正当な」反対ではありません。


以上から、本件はムスリムに対する明確な差別事例として解釈できます。

追記

「家の隣にアーレフの施設が建設されるようなものだからモスク建設への反対は正当」というご意見がありますが、この事例ですとアーレフの施設が立つというよりは

「かつてオウム真理教団が反社会的事件を起こしたから自宅の隣に寺が建つのに反対するのは正当(オウム真理教は仏教を思想的母胎とした教団)」

という主張とおなじくらい乱暴です。ほとんどのイスラム教派はテロ行為を否定しており、アルカイダのようなものは仏教におけるオウムくらい特殊な存在です。
(アーレフを締め出すべきかどうか、という議論はまた別の話なのでいつかの機会に。)


「そんなこと言われてもムスリムへの理解なんて全然進んでないんだから仕方ないではないか」という主張もあるようですが、知らなかったら差別してよい訳ではありません。無知は差別の免罪符ではありません。