図書館学徒未満

図書館学に関する本を読んだり調べごとをしたりしています。はてなダイアリーから移行しました。

図書館よ、大志を抱け! -----公共図書館にとって政策や競争とは何か


本書の中では、図書館運営において政策は重要であると繰り返し主張されています。

知識や情報の共有化によって社会を豊かにし、国を強くしていく、そのために公共図書館があるのです。

(前掲書 p.129)


常世田氏は公共図書館は現在の自己責任・自己決定型社会において、市民が社会生活を営み国を運営していく上で必要な情報を仕入れるためになくてはならない機関だと位置づけており、国の在り様すら決定する重要な機関なのだから、政策レベルで公共図書館の運営に力を入れるべきだと主張しています。
常世田氏ははっきりと国際競争を意識しており、日本が外国に負けない競争力を獲得するために図書館が必要だと述べています。


「たかが公共図書館が国際競争だなんて、大げさじゃない?」と思われるかもしれませんが、個人的には常世田氏のビジョンにすごく共感します。「国際競争」という言葉が、ここ数年でとても肌身に感じられる社会になりました。我々は既に個人レベルで、普段の日常生活においてすら、常に激しい競争にさらされています。


さて「競争力」と「図書館」というお題が出てきたところで、ちょっととってつけたような引用で恐縮ですが、
「公共図書館にアウトソーシングは間違っている」 - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
こちらの記事を思い出します。


公共図書館の競争力とは一体なんだろう?」というテーマについて、浦安図書館の実力をちらりとお目にかけましょう。

さらに、仕事に必要な資料が利用できる図書館があることから(浦安市に)転入してくる市民が少なからず存在することが判明した。

(前掲書 p.161)


なんと!!なんと!!!


公共図書館が他の自治体から住民を獲得してくる!!!!


さすが浦安!俺達にはできねェことを平然とやってのけるゥ!!


これが公共図書館の競争力とも言うべきものなんでしょうか。何とも凄まじい話です。


常世田氏は、自己決定型社会においては就職する会社や購入する株式、預金する銀行、果ては居住する自治体まで、自分で情報を集めてよく調べ、一人一人が考えて決定を下さなければいけないと述べています。
ということは、そんな社会においては銀行であれ会社であれ、利用者が求める情報とサービスを適切に提供した者が勝つのであり、自治体や公共図書館も例外ではない訳です。浦安図書館はその卓越した「競争力」によって、自己責任型社会における望ましい組織のあり方を身を以って示したと言えるでしょう。


……と大いに恐れおののいたところで、次は浦安図書館が如何にしてここまでの凄まじい競争力を持つに至ったかを概観していきましょう。