図書館学徒未満

図書館学に関する本を読んだり調べごとをしたりしています。はてなダイアリーから移行しました。

非生産者は切り捨てるべき?------老人・障害者への支援(pp.125-pp.134)

こちらも引き続き、ブルックリン公共図書館の事例が報告されています。


同図書館は高齢者サービスのための独立部門を持っています。そこに所属するシニア・アシスタントというスタッフは全員が55歳以上です。つまり、高齢者の支援を高齢者自身が行っているのです。

高齢者に対するサービスの質を考えた時、本当に何が喜ばれるのかは、当事者でなければわからないこともある。「若い人が良かれとやってくれていても、必ずしもありがたいわけではないことも多いのです」
(前掲書 pp.125-pp.126)

こうした高齢者自身の実感に基いて、大活字本の宅配やシニア向けの講座など、痒いところに手が届くサービスが提供されています。

また、図書館が高齢者のパソコン講師を育成し、その後彼らが別の高齢者にPCの使い方を指導するサービスも行われています。世代間のデジタル・デバイドの問題を解決する上で良策ですし、なにより高齢者自身にサービスの担い手となってもらう、もしくは生きた資料となってもらうために有効なシステムです。


図書館では障害者への就職支援サービスも行われていますが、老人や障害者といった、生産人口にはカウントされていないような層でも、図書館で適切なサービスを提供することで、十分社会の戦力として活用できます。
むしろ、少々のイニシャルコストがかかったとしても、彼らを人的リソースとして活用できたら、社会全体の負担は減るのではないでしょうか。

「サービスを与える健常者−サービスを受ける弱者」 の構図ではなく、彼ら自身でできることはどんどん任せようとする姿勢に感銘を受けます。