小野田美都江「デジタルデバイドを解消する図書館」pp.24-pp.43
コンピュータやインターネットの普及によって、情報通信技術にアクセスする環境や機会を持つか持たないか、あるいは、IT活用能力を持つか持たないかで、社会的・経済的な不利益を被る可能性が生じている。
(前掲書 p.24)
という冒頭から始まる本稿は、表題のとおり、デジタルデバイド(情報格差)とその現状、解決への展望を論じています。
小野田氏は「ITのアクセス環境を用意し、IT講習会を行うだけでは、デジタルデバイドの問題は決して解決しない」とし、その理由を以下の3つにまとめています。
- インターネット上の情報の中には、有料で精度が高い情報がかなり含まれている。------経済力による情報格差が生じる
- 現在の市民向けIT講習会は、市民の情報活動を継続的にサポートできない
- インターネットで公開されている情報の著作権者への何らかの支払いシステムが配慮されていない------著作権者に権利と利益を保証しないとインターネットの発展が危うくなるが、同時に経済力による情報格差が生じる原因ともなる
そして、それらの問題を解決するために、公共図書館が有効であると述べています。この辺り、前稿の菅谷氏のレポートと緩やかなつながりを感じます。
続いて、日米のデジタルデバイドとその対策を概観していますが、2007年も終わりに近づいた現在では事情が変わっているところも多々ありますので、細かい紹介は省き、興味深いデータを拾い読みしていきます。
図書館のインターネット接続の日米の格差(pp.32-pp.37)
日米の公共図書館におけるインターネット接続状況は以下の通りでした。
- 日本……26.5%(1999/10 調査)
- アメリカ……95.7%(2000/07 調査)
……おいおい、IT大国日本!!
アメリカの図書館で利用者に提供されている端末台数(平均)
- 都市部……17.3台
- 郊外……8.7台
- 田舎……4.9台
……その頃、日本では70%の図書館が1台の端末を利用者に提供していた。
有料データベースを開放しているアメリカの図書館の割合
- 都市部……77.3%
- 田舎……52.6%
………………。
以上のように、日本とアメリカでは、公共図書館のインターネット接続率と端末台数に圧倒的な差が存在する。
(前掲書 p.37)
ちなみに、「日本の公共図書館のインターネット接続に関する調査報告は非常に少な」いらしいので、最新のデータを今度探してみようかと思います。
まとめ?
本稿では、情報を得る手段のみではなく、その活用においても格差が生じていることに言及しているのが面白いな、と思いました。最近、全国統一学力テストの結果も発表になった*1ことですし、情報活用能力とその育成についても改めて検討しなおす必要がありそうです。
*1:子どもの学力はもちろん、その結果を見た大人のメディア・リテラシーをも露呈するテストとなりました。