図書館学徒未満

図書館学に関する本を読んだり調べごとをしたりしています。はてなダイアリーから移行しました。

公共図書館って無くても死なないよね?

「図書館は必要か」議論についに参入!?……いや、関連議論は全然追いかけてないので流れからして的外れなこと言っていても許してください。

「なんで図書館は有償じゃないん?」とか「有償じゃないと利用者増やすメリットないん?」とか

上記記事に触発されて本エントリを書きますが、こちらの本旨には関係ない突っ込みなのでこっそり。いぢめないでください。(何

もちろん、実際には最低限の情報を提供することにとどまらず自治体が発展するために必要なサービスは色々と展開されているところもあると思うが。ていうか最低限の保障、っていう面から捉えるとほとんどの人が学校教育を受けていて、生活水準も一定のレベルが保障されている国内だと、公立図書館の存在意義って微妙だよね・・・って話を昨晩の飲み会でid:katz3さんやid:humotty-21さんとしてたり。「むしろ学校図書館に力入れるべきだろう」とか


「なんで図書館は有償じゃないん?」とか「有償じゃないと利用者増やすメリットないん?」とか

「最低限の保障」という言い方をしてしまうと色々議論が紛糾しそうなのでちょっと恐々ですが。
たとえば世の多くの社会人が公共図書館で利用するような『10万円から始める投資信託入門―初心者のための買い方・売り方ガイド』みたいな本は、小学校で教わる常用漢字の知識に比べればより「最低限」ではない知識で、常用漢字分からなかったら生活には非常に困るけれど投資信託のことなんて分からなくたって死なないんだから、そういう情報を提供する公共図書館学校図書館に比べれば無くても別にいいよね?っていう話だったりするんでしょうか。

学校図書館*1って学校の中の人以外利用できないんだぜ

一般的に、日本人は学校にいる時間より遥かに長い時間を学校の外で過ごします。その間、彼らに全く学びの必要がない訳ではありません。むしろ人によっては、学校の中にいるときより真剣に学ぶ必要がある場合すらあります。

  • 来週までに少しでも人目を引くようなプレゼンを仕上げなきゃいけない……
  • 俺の職場、なんか労働基準法違反している気がする?
  • 結婚式のスピーチ任された。胃が痛い。
  • オンライントレーディングに興味あるけれど、何も知らずに大損したくない
  • 起業したい!でもどうしたらいいんだろう?
  • 今年はアフィリエイト収入がかなり増えた。税金対策はどうしたらいいんだろう?

上記のような悩みとそれを解決する「学び」は、学校でやるような国語や数学とは全く異質の学びです。体系立っている訳ではないし、アカデミックでもありません。ですが、その学びを必要としている当の本人やそれを取り巻く人々にとっては非常に真剣な悩みであり、しかもそれは適切な情報の提供さえあれば解決がぐっと楽になります。そして学校で提供されている普通教育と同様に、人々の生活の質を上げます

学校図書館が学校の構成員しか使用できない施設である以上、こういった学校の外の人たちのニーズには応えられません。


というか、応えるべきかどうかも大いに疑問です。いくら生活に必要で役に立つからと言って、学校図書館が「わかる!使える!労働基準法―「知らない」ではすまされない仕事のルール (PHPビジネス新書)」という本を提供するべきなんでしょうか?労働基準法を知らないと、九九を知らない以上に「死ぬ」ような目に遭う可能性があるのは確かですが、それは学校図書館のシゴトではないとも思います。

学校図書館と公共図書館は別の役割を持った組織だよねーっていう当たり前の結論

労働基準法や税金制度は学校では教えない知識です。ですが、学校で教える白色矮星の一生やヒドラの発生の知識と比べて、どっちがより生活に必要な「最低限」の知識かはちょっと答えられません。それぞれ人生において役に立つ時期や場面が異なるし、どちらも場合によってはその知識が無かった所為で死ぬような目に遭うこともあるでしょう。


そしてこれもごく当然のことですが、学校で人生において必要なすべての知識を教えられる訳でもありません。人は学校を卒業した後も、下手したら一生、日々学びの必要性に晒されて生きていきます


そのときに、学校図書館では応えられない・応えるべきでないニーズが発生するのもごく当然のことだと思います。そういうニーズは「全ての人々にあらゆる分野の情報を提供するポータルサイト 」(by 豊田高広)である公共図書館が、まずは引き取るべきでしょう。学校図書館公共図書館、どっちが大事かという議論は「がんセンターと総合病院どっちが大事か」みたいな議論と似たところがあって「いや、そもそもやってること違うし……」と思えてしまいます。


その上で、たとえば「学校図書館公共図書館等、図書館全体に使える予算が100あって、これを各図書館で分けたい。どういう割合にしたらいいか」という問題に直面したとき、それぞれの館数、利用者層やニーズの切実さ等を考慮した建設的な議論が生まれてくれたらいいと思います。


なんつーか、結局特に目新しいことも言わずオチも無くグダグダで終わりますが許してください。ただ、現在学籍を持たないまま公共図書館を利用して学んでいる者として、思っていることを書いてみました。
そして公共図書館はこれからも、学びから遠いところにいる人々の味方であって欲しいと思います。